疾患を疑うポイント
●65歳以上の比較的高齢者.
●数年をかけて徐々に増悪する関節痛.
●血液検査で炎症所見なし.
●関節液は黄色透明で粘稠度が高い.
学びのポイント
●人口の高齢化とともに増加している.
●手指の変形性関節症の初期は関節リウマチ・膠原病の初期との鑑別が難しい.
●治療は早期から保存的治療が主となる.
●予後はよいが,下肢大関節の末期OAにより歩行障害が生じ,移動能力が低下すると,ロコモティブシンドロームとなり要介護リスクが高くなる.
▼定義
関節軟骨の変性・摩耗・破壊が生じ,それに続発する軟骨下骨・関節辺縁における骨の反応性増殖を伴う関節構成体の慢性退行性疾患.
▼病態
加齢・肥満・性別・遺伝的素因などの全身的要因と,関節弛緩や過去の外傷など関節の不安定性・関節への力学的ストレスなどの局所的要因が関与する.関節軟骨マトリックスの破壊は,軟骨細胞自身が産生するアグリカン分解酵素,マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)などによるアグリカン分解とⅡ型コラーゲンの破壊によって生じる.軟骨変性に伴い,細胞片やコラーゲンの断片が二次性滑膜炎を惹起し,インターロイキン(interleukin:IL)-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生が亢進し,軟骨細胞による基質破壊酵素の産生をさらに誘導して,軟骨の摩耗が促進される.
▼疫学
男性よりも女性に多く,男女ともに年齢とともに有病率は増加する.わが国では膝OAのX線学的有病者数は2,530万人(男性860万人,女性1,670万人),有症状の膝OA患者数は約800万人と推定されている.
▼分類
原疾患が明らかでない一次性と,なんらかの疾患や既往に続発する二次性に分けられる.膝OAでは一次性が多く,肘OAは肘関節症患者の1~2%ときわめて少なく,股関節OAでも発育性股関節形成不全などに引き続く