疾患を疑うポイント
●中高年男性に多い.
●身体所見として上眼瞼,顎下部の腫脹,画像所見で膵や腎などの臓器腫大を認める.
▼定義
高IgG4血症と腫大した臓器に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を呈する全身性,慢性炎症性疾患.
▼病態
Th2型(アレルギー性)炎症による臓器圧排症状が主体であるが,TGF(transforming growth factor)βを介した臓器線維化が緩徐に進行し,不可逆的な機能障害に陥る.
▼疫学
わが国に約8,000~2万人の患者がいると推定されている.60歳以上の中高年男性に好発する.
▼分類(病変の分布)
涙腺,顎下腺,膵が主な罹患臓器である.これらに下垂体炎,甲状腺炎,気管支・肺炎(IgG4関連呼吸器疾患),胆管炎(IgG4関連硬化性胆管炎),腎炎(IgG4関連腎臓病),大動脈周囲炎,前立腺炎などを合併する.
▼診断
診断には,IgG4関連疾患包括診断基準(表13-25図)または臓器別診断基準を参考とする.膵など生検が容易ではない臓器を考慮し,包括診断基準で確定診断に至らなくても,臓器別診断基準を満たせば確定診断できるようになっている.
IgG4関連疾患と診断した場合には,全身検索にて合併症の評価を実施し,潜在する可能性のある悪性腫瘍のスクリーニングを行う.造影CTにて自己免疫性膵炎であれば,びまん性に腫大した膵に被膜様構造物を認め(図13-22図a矢印),IgG4関連腎臓病の場合には,腫大した腎実質に造影不良域を呈する(図13-22図b矢印).
▼治療
IgG4関連疾患に対する寛解導入療法の第一選択は,副腎皮質ステロイド薬である.中等量以上を投与し,治療反応性を示さない場合には診断の見直しが必要である.
寛解導入療法後,多くの症例では少量ステロイド薬による維持療法が必要である.
▼予後
厚生労働省研究班の検討では,治療開始後5年で30%,7年で4