診療支援
治療

6 抗リン脂質抗体症候群
antiphospholipid syndrome
加藤 将
(北海道大学大学院・免疫・代謝内科学)

疾患を疑うポイント

●若年者の血栓症,反復する妊娠合併症.

●血栓症では脳梗塞と静脈血栓塞栓症,妊娠合併症では流死産が多い.

学びのポイント

●若年者の血栓症,反復する妊娠合併症の原因として最も頻度が高い.

●約半数がSLEを合併する.

▼定義

 抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies:aPL)が持続的に検出され血栓症または妊娠合併症を呈する自己免疫疾患/後天性血栓性素因〔第8章のも参照〕.

▼病態

 「抗リン脂質」という表現に相反しaPLの主な対応抗原はβ2グリコプロテインⅠやプロトロンビンなどのリン脂質結合蛋白質である.これらのリン脂質結合蛋白質は陰性荷電リン脂質と結合し構造変化を起こした際にのみエピトープを表出し抗原性を帯びる.

 aPLの力価ならびに多種が血栓症の発症と強い相関を示すことから,aPLは病原性自己抗体であると示唆される.aPLは血管内皮細胞,単球,血小板などの凝固を促進する(procoagulant)細胞の活性化,好中球細胞外トラップの誘導などを介し,血栓形成に寄与すると考えられている.実際,約30%の患者に血小板減少がみられ,aPLによる血小板の活性化を反映したものと考えられる.

 約半数の患者が全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)を合併することから,抗リン脂質抗体症候群はSLEの亜型とも考えられている.ゲノムワイド関連解析により,MHC class Ⅱ,STAT4,IRF5などが両疾患に共通の疾患感受性遺伝子として同定されている.

▼疫学

 有病率は10万人あたり約10人と推定される.男女比は約1:5と女性に多く,好発年齢は20~40歳代である.

▼分類

 一般的に細分類はされないが,動脈血栓症,静脈血栓症,妊娠合併症では治療法の選択が異なる.

▼診断

 なんらかの血栓症または妊娠合併症が認めら

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