診療支援
治療

1 高IgM症候群(免疫グロブリンクラススイッチ異常症
hyper-IgM syndrome(defect of immunoglobulin class switch recombination)
今井 耕輔
(東京医科歯科大学准教授・茨城県小児・周産期地域医療学)

疾患を疑うポイント

●反復性あるいは重症呼吸器系細菌感染症に罹患.1型,3型は,ニューモシスチス肺炎,寄生虫感染症,ヘルペス属ウイルス感染症などの日和見感染症に罹患.

●IgG,IgAの低値,IgMは正常または高値を示す.T細胞・B細胞数は正常.1型は好中球減少もみられる.

学びのポイント

●IgCSR障害による易感染性疾患.

●HIGMでよくみられる感染症を知ることにより,ヒトの感染防御におけるIgCSRの役割を知ることができる.

●治療は免疫グロブリン補充療法.1型には早期の造血幹細胞移植.

▼定義

 免疫グロブリン(Ig)クラススイッチ再構成(class switch recombination:CSR)障害による低IgG,低IgA血症に伴う易感染性を特徴とする原発性免疫不全症(図13-24)

▼病態

 免疫グロブリンのクラススイッチは,2次リンパ組織〔リンパ節,扁桃,脾臓,小腸Peyer(パイエル)板〕内の胚中心(germinal center)で,抗原と,ヘルパーT細胞からのサイトカイン分泌と,CD40リガンド(CD40L)によるB細胞上のCD40への刺激により生じる(図13-24).その遺伝子異常による障害により,IgG,IgA,IgEの低下につながる.IgGは血中の病原体に結合し,ウイルスや毒素の中和,好中球・マクロファージによる細菌の貪食(オプソニン化)や,NK(ナチュラルキラー)細胞による抗体依存性細胞傷害を助け,補体の活性化によるグラム陰性桿菌の溶菌を担っている.IgAは粘膜表面のウイルスの中和,細菌の除去を,IgEは寄生虫免疫を担っている.したがって,クラススイッチ障害では,こうした病原体への易感染性がみられる.

▼疫学

 日本では,CD40L欠損症が60例前後,クラススイッチにかかわるシチジン脱アミノ化酵素であるAID欠損症が25例,DNAからウラシルを除去する酵素で

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