ざっくりわかる膠原病・リウマチ性疾患,原発性免疫不全症
A 「免疫異常症」としてまとめて理解しよう
正常免疫系には,自然免疫系と獲得免疫系とが備わっています.病原微生物の侵入に際して宿主は,まずマクロファージ,顆粒球,補体などが構成する自然免疫系を作動させて病原微生物を排除しようとします.しかし,それが不十分な場合,自然免疫系に属する樹状細胞を介してTリンパ球やBリンパ球などが活性化され獲得免疫系を作動させて,病原微生物を非自己と峻別し,排除力を集中させて除去しようとします.その際に獲得免疫系が作動させる排除力は,自然免疫系の構成要素です.そして,強力な排除の際,その場に代償としての炎症が起こります.このように宿主は自然免疫系と獲得免疫系をお互いに協調させ,病原微生物を排除しているのです.
一方,獲得免疫系が誤作動し,自己を非自己と認識することによって起こるのが,膠原病・リウマチ性疾患→です.ちなみに,獲得免疫系が誤作動し,無害な非自己,例えばスギ花粉などを有害な非自己と認識してしまうことによって起こるのがアレルギー疾患です.
免疫系の遺伝子に異常がある場合,自然免疫系や獲得免疫系の機能が低下し,宿主は病原微生物をなかなか排除できず,感染症を反復することがあります.これが原発性免疫不全症→です.別の遺伝子異常では,病原体侵入や獲得免疫系からの作動指示もないにもかかわらず自然免疫系が勝手に活性化してしまい,無意味に炎症が起こることがあります.これが,間欠的な発熱や炎症をきたす自己炎症症候群→です.
膠原病・リウマチ性疾患,原発性免疫不全症,自己炎症症候群,これらはすべて,免疫機能になんらかの異常をきたした状態であるととらえられます(図13-1)図.古典的な概念では,膠原病・リウマチ性疾患は免疫の過剰反応,原発性免疫不全症は免疫の過小反応によるものであり,両者は正反対の病態とさ
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/1 関節リウマチ
- 新臨床内科学 第10版/【1】複合免疫不全症
- 新臨床内科学 第10版/1 TNF受容体関連周期性症候群
- 新臨床内科学 第10版/3 全身性エリテマトーデス
- 新臨床内科学 第10版/4 多発性筋炎,皮膚筋炎
- 新臨床内科学 第10版/5 全身性硬化症(強皮症)
- 新臨床内科学 第10版/(1)結節性多発動脈炎
- 新臨床内科学 第10版/8 急性リウマチ熱
- 治療薬マニュアル2024/アザチオプリン《アザニン イムラン》
- 今日の治療指針2023年版/ベリムマブ(遺伝子組換え)
- 今日の治療指針2024年版/ベリムマブ(遺伝子組換え)
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/自己炎症性症候群
- 臨床検査データブック 2023-2024/日和見感染症
- 臨床検査データブック 2023-2024/原発性免疫不全症候群
- 新臨床内科学 第10版/血液・造血器疾患を理解するためのポイント
- 今日の診断指針 第8版/■膠原病・免疫疾患の最近の動向