【疾患概念】
外傷性ショックは一般的には外傷により発生したショックが想起される用語である.救急医学会のウェブサイト上の医学用語解説集によると,「ショック」は生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機に至る急性の症候群とされている.したがって外傷に伴う大量出血により重要臓器の血流が維持できないものを外傷性ショックと考えるのが妥当であろう.
【病型・分類】
ショックはその成因により表2-1図のように4つに分類される.
外傷に伴って発生するショックはほとんどの場合,大量出血に伴う出血性ショック(循環血液量減少性ショック)である.米国外科学会(American College of Surgeons)による出血性ショックの重症度分類を表2-2図に示す.出血量に応じてバイタルサインの変化も異なる.循環動態の変化としては,まず心拍数が増加し心拍出量を代償する.代償が効かなくなると収縮期血圧の低下がみられ,Shock Index(心拍数/収縮期血圧)が1を超えてくるが,その時点ではすでにclassⅢのショックになっている.
そのほか心タンポナーデや緊張性気胸に伴う閉塞性ショック(心外閉塞・拘束性ショック),脊髄損傷に伴う神経原性ショック(血液分布異常性ショック)なども起こりうる.
必要な検査とその所見
【1】画像検査
①超音波検査:FAST(focused assessment with sonography for trauma)により,心タンポナーデや胸腔・腹腔内出血など,出血により生じるエコーフリースペースを迅速に検索する.
②胸部および骨盤単純X線検査:大量血気胸,緊張性気胸および不安定型骨盤骨折の有無を確認する.
③pan-scan CT(全身CT):出血源の同定のため動脈相・静脈相での撮影を行う
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