【概説】
多発外傷患者の初期治療として最も重要なものの1つは,出血のコントロールである.主たる出血源は胸腔,腹腔,後腹膜腔の3つであるものの,四肢骨折,特に開放骨折に伴う出血も相当なものである.骨盤骨折は後腹膜出血をきたすものとして知られているが,早期に骨盤バンドで固定し,動脈塞栓術を行うことが鍵となる.多発外傷患者の場合,1人の外傷チームリーダーが治療の優先順位を決定していくことが必要である.救命のためには,四肢外傷の診断がつく前に治療が開始されることもしばしばである.しかし,四肢外傷治療は非常に専門的な医療であり,患者の社会的予後に重大な影響を与える.それゆえ,外傷整形外科医がチームの一員として,外傷初期から参加することが必要である.外傷チームリーダーと外傷整形外科医は,患者の全身状態からダメージコントロール整形外科手術(damage control orthopaedics;DCO)