診療支援
治療

多発外傷の初期治療
Primary treatment of patients with multiple trauma
土田 芳彦
(湘南鎌倉総合病院外傷センター センター長〔神奈川県鎌倉市〕)

【概説】

 多発外傷患者の初期治療として最も重要なものの1つは,出血のコントロールである.主たる出血源は胸腔,腹腔,後腹膜腔の3つであるものの,四肢骨折,特に開放骨折に伴う出血も相当なものである.骨盤骨折は後腹膜出血をきたすものとして知られているが,早期に骨盤バンドで固定し,動脈塞栓術を行うことが鍵となる.多発外傷患者の場合,1人の外傷チームリーダーが治療の優先順位を決定していくことが必要である.救命のためには,四肢外傷の診断がつく前に治療が開始されることもしばしばである.しかし,四肢外傷治療は非常に専門的な医療であり,患者の社会的予後に重大な影響を与える.それゆえ,外傷整形外科医がチームの一員として,外傷初期から参加することが必要である.外傷チームリーダーと外傷整形外科医は,患者の全身状態からダメージコントロール整形外科手術(damage control orthopaedics;DCO)の必要性を判断し,そして後日確定的治療を計画しなければならない.


実施手順

【1】初期外傷蘇生

 多発外傷患者の初期治療は,ATLS®(Advanced Trauma Life Support)プロトコル〔日本ではJATECTM(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)プロトコル〕に準拠した包括的survey(primaryからsecondary)が必要である.初期蘇生(primary resuscitation)のゴールは,生命を脅かす損傷を同定し,直ちに治療を開始することである.気道,呼吸,循環は,組織の酸素化が十分に保たれるために必要である.そして循環の評価として,出血部位を同定し止血をはかることが必要となる.病院に到着したときにショック状態である患者は,おそらくは出血性ショックに陥っている.胸腔,腹腔,後腹膜腔は3大出血部位であり,胸部・骨盤X

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?