診療支援
治療

汚染・挫滅創のプライマリ・ケア
Primary management of the dirty and crushed wound
入船 秀仁
(手稲渓仁会病院 主任医長〔札幌市手稲区〕)

【疾患概念】

 外傷によって生じる創では,大なり小なり軟部組織の汚染や挫滅を伴っている.そのような創では,局所の挫滅により損傷組織から周辺にかけての微小循環は破綻している可能性が高い.洗浄後一次的に創閉鎖を行ったとしても,創治癒に向けた血管新生は見込めず,最終的には創周囲の組織壊死をきたし,壊死組織から感染が生じて治療に難渋する可能性がある.

 汚染・挫滅創のプライマリ・ケアで重要なことは,①徹底的な洗浄・異物除去を行って一次感染を予防すること,②挫滅範囲を見極め,デブリドマンを行って新鮮化を行い,壊死組織による二次感染を予防することである.特に広範囲,深部に至る軟部組織損傷を伴う症例では,局所の血流悪化や感染の発症などにより壊死範囲が拡大して治療が長期化,難治化することもある.そのため,汚染・挫滅創では,その後の再建も含めた軟部組織治療を円滑に行うために,適切なプライマリ・ケアが非常に重要である.


診断のポイント

 局所の損傷の形態(圧挫,引き抜き損傷,熱損傷,熱圧挫損傷,化学物質による損傷など)ばかりでなく,全身状態,他部位損傷や主要臓器損傷などの合併損傷の有無についてすみやかに評価を行い,可及的早期に治療を開始する.


治療方針

【1】問診

 受傷機転,受傷場所,屋外であれば天候や気温,受傷時間,既往歴(感染のリスク要因;高齢,糖尿病,長期透析,ステロイド・免疫抑制薬の常用など,血行障害や止血能などに影響する要因;高血圧,抗血小板薬・抗血栓薬・抗凝固薬の使用など)について確認する.

【2】損傷部位の確認

 交通外傷や高所墜落などの高エネルギー外傷では,特に患者が訴える部位や肉眼で確認できる部位以外(衣服で覆われている部位や,頭蓋内や体幹部の主要臓器など)にも損傷を受けていることがある.治療対象となる創の部位や数を正確に把握することは重要であるが,常に全身にも目を向けて検索することが必要で

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