診療支援
治療

スポーツによる腰背部の外傷・障害
Lumbar spine injury related to sports activities
眞鍋 裕昭
(徳島大学 助教)

【概説】

 アスリートのうち,約75%は競技人生の中で少なくとも1回は腰痛を訴えるとされている.これはスポーツ活動中の脊椎の屈曲・伸展動作の反復が関与すると考えられている.疼痛の原因部位としては椎体終板,椎間板,椎間関節,仙腸関節,神経根などが挙げられる.アスリートの最終目標は疼痛がない状態でできるだけ早く復帰することであり,適切な治療を行うためにも早期に正確な診断を行うことが求められる.アスリートの腰痛は,特異的腰痛から非特異的腰痛に至るまで,病態はさまざまである.非特異的腰痛は,種々の画像検査を行っても診断不能な原因不明の腰痛の代名詞として使われることがあるが,本来の意味は,画像診断を急ぐ必要のない腰痛の総称であり,アスリートの疫学・患者背景を考慮すると,ほとんどの症例は特異的腰痛として扱われるべきものである.


問診で聞くべきこと

 腰痛の発症時期,罹患期間,発生の状況(外傷の有無),スポーツの種類,競技開始時期,腰痛を感じるタイミング,ポジション,チーム内の立場(学年やレギュラーか控えかなど),重要な試合の時期.


必要な検査とその所見

(1)理学所見

 圧痛,叩打痛による疼痛部位の検索は必須である.特に圧痛は棘突起,傍脊柱起立筋,椎間関節,仙腸関節などを正確に母指で圧迫することで得られる情報は多い.続いて,脊柱の可動域を確認する.前屈・伸展・側屈・回旋の4方向の負荷をかけるが,いずれかの姿位で疼痛が誘発される場合がほとんどであり,これらを競技中の動作と照らし合わせることで病態把握が可能となる.また,前屈時痛が強い場合には指尖床間距離(FFD)を計測することで,治療効果の判定にも用いることができる.疼痛誘発テストとしての大腿神経伸展テスト(FNST)や下肢伸展挙上テストについては,疼痛がない場合でも,大腿四頭筋や大腿二頭筋の柔軟性評価のために必ず行う.その他,腰椎のみならず,胸郭の

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