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治療

起炎菌の今日的特徴
A characteristic transition of today's bacteriological environment in bone and joint infections
山田 浩司
(中野島整形外科 院長〔川崎市多摩区〕)

1.わが国の特徴

 骨関節感染症は,多少の地域的特性はあるものの,黄色ブドウ球菌を中心としたグラム陽性球菌(GPC)が主要起炎菌であることに変わりはない.骨関節感染症で最も起炎菌に関する疫学的情報が多いのは手術部位感染(surgical site infection;SSI)であるが,どの国のSSIサーベイランスもGPCが主要起炎菌である.わが国でも,日本整形外科学会が主導し2010年に報告された学術プロジェクト研究で,人工関節置換術と脊椎インストゥルメンテーション手術のSSI起炎菌はともに黄色ブドウ球菌が最多であり,それぞれ59%,49%を占めた.本報告では特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の割合が多く,それぞれ全体の42%,37%と最多であった.さらに,表皮ブドウ球菌などコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococci;CNS)を含めると,GPCはSSI全体の70%以上を占めた.

 2018年の厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)年報でも整形外科手術のSSI起炎菌は,四肢切断術,骨折の観血的整復術,椎弓切除,脊椎固定術,人工膝関節,人工股関節のいずれの術式においても黄色ブドウ球菌が最多で,全SSIの33~50%を占めた.そのうち33~42%がMRSAであり,同定される耐性菌のなかで最多である.感染対策上重視すべき病原体であることに変わりなく,特にMRSA感染は難治性感染症の原因となるだけでなく,院内アウトブレイクを起こす点で注意が必要である.その他JANIS年報で報告されている主要SSI起炎菌はPseudomonas aeruginosaCorynebacteriumEnterobacter cloacaeStre

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