診療支援
治療

化膿性疾患の化学療法
Antibiotic therapy in orthopaedic infections
正岡 利紀
(東京医科大学 准教授)

【疾患概念】

 化膿性疾患とは細菌が原因となり組織に生じる炎症性疾患であり,膿貯留とともに組織壊死を生じる.整形外科領域では骨髄炎・関節炎・椎間板炎・蜂窩織炎・筋膜炎のほか,術後創部感染症なども含まれる.起因菌としては,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis),緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などが多いが,連鎖球菌属(Streptococcus),エンテロコッカス属(Enterococcus)や真菌(fungus)などが原因となることもある.最近ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の割合が増加傾向にある.また糖尿病患者の増加,ステロイドや免疫抑制薬などの使用患者の増加に伴い,嫌気性菌が起因菌となる場合も増えている.


問診で聞くべきこと

 既往疾患や現疾患をしっかり聴取することは,感染につながるバックグラウンドを把握するうえで重要となる.また抗菌薬に対するアレルギーの有無の聴取は薬剤選択上,必須である.


必要な検査と診断のポイント

 化膿性疾患の局所所見としては発赤・腫脹・熱感あるいは膿の流出などが挙げられるが,深部感染の場合は所見に乏しいこともあり注意を要する.診断上最も重要なのは細菌の同定であり,複数箇所より複数回の検体採取を行うようにする.また,抗菌薬投与前に検体を採取することが重要である.


治療方針

 ①黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌:メチシリン感受性ブドウ球菌の多くがペニシリン耐性を有するため,第1選択薬は第1世代セフェム系薬となる.MRSAについては他項参照.

 ②緑膿菌:アミノグリコシド系薬,ピペラシン,第3世代セフェム系薬などが選択される.また,感受性に応じてカルバペネム系,キノロン系薬なども選択される.

 ③連鎖球菌:ペニシリンが第1選択となる.

 ④エンテ

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