【疾患概念】
デスモイド型線維腫症(以下,デスモイド)は,WHO腫瘍分類では局所浸潤性に富むが遠隔転移はきたさない,いわゆる中間型に分類される(筋)線維芽様細胞増殖性の軟部腫瘍である.年間発生頻度は100万人あたり2~4人とされ,APC遺伝子変異による家族性大腸腺腫症に伴い腹腔内に多く発生するデスモイド(Gardner症候群)と,主にβ-catenin遺伝子(CTNNB1)変異を基盤として腹腔外に多く発生するデスモイドに分類される.
【病態】
腹腔外デスモイドの典型例では,深在性で辺縁がやや不明瞭な硬い腫瘤として触知し,痛みを伴うことも多い.好発部位は肩甲帯,胸腹壁,骨盤部・四肢などで,思春期から若年成人期の女性に多い.多中心性に発生したり,近接関節障害や神経圧迫症状を呈する場合もある.手術後の再発率がきわめて高く(20~70%),再発例で急増大を示すものもあり,その治療には慎重を要する.
問診で聞くべきこと
特徴的な臨床症状に乏しいため,増大傾向,痛みの程度,近接関節障害や神経症状の有無などを問診するとともに,触診により深在性や硬さを確認することが重要である.
診断のポイント
単純X線,CT,MRIなどで局在と周囲臓器への影響や質的診断を行うが,最終的な診断には生検が必須である.針生検では診断が困難な場合もあり,熟練した骨・軟部腫瘍専門医と病理医の協力を得て,必要であれば切開生検を行うのがよい.
治療方針
従来は広範囲切除による手術療法が中心であったが,その高い再発率のため,近年では慎重な経過観察,薬物療法〔NSAIDs,抗エストロゲン薬(タモキシフェン薬),抗がん剤(ビンブラスチン,メトトレキサート薬,ドキソルビシン),分子標的薬(ソラフェニブ,パゾパニブ)〕や放射線療法などの有効性が示唆され,最適な治療選択は患者ごとに判断を要するため,骨・軟部腫瘍専門医を中心とした集学的な医
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