【疾患概念】
ほぼすべての悪性腫瘍(がん)は骨に転移を生じる可能性があり,転移性骨腫瘍は最も頻度が高い悪性骨腫瘍である.原発腫瘍の治療成績の向上によって生存期間が延長したため,骨転移との共存期間も延長し,骨転移の治療頻度はますます高まってきている.
わが国が「がん時代」を迎え,がんは根治を目指すとともに,慢性疾患としてがんとの共存を許容してQOLの維持・向上をはかるというパラダイムシフトが生じている現在,がん患者が動き続けることを目的とする「がんロコモ」の概念に基づいた骨転移診療が求められている.骨転移診療はがん診療のチーム医療の一環として行われる.適切ながん診療には,移動能力の維持を通じてADL・QOLを向上させる整形外科の関与が欠かせない.
【頻度】
わが国のがんによる死亡者数は約38万人(2019年)であり,死亡時には60~70%が骨転移を有すると推定されている.好発部位は脊椎,骨盤などの体幹,そして大腿骨,上腕骨などの体幹に近い長管骨である.原発腫瘍として頻度が高いのは,剖検データでは肺癌,胃癌,乳癌,大腸癌の順と報告されている.
【病型・分類】
局所の単純X線所見で溶骨像が優位な溶骨型,造骨像が優位な造骨型,両者が混合した混合型,骨破壊がみられない骨梁間型に分類される.また,全身の骨に急速に進展する骨髄癌腫症という病態がある.
【臨床症状または病態】
骨転移によって生じる局所症状は疼痛,骨折,麻痺である.全身症状として高カルシウム血症による便秘,口渇,吐き気,意識障害などのさまざまな症状が生じる.ただし,骨転移は無症状のものも多いことに注意が必要である.
問診で聞くべきこと
骨転移が疑われた場合,最も重要なことはがんの既往の確認である.病名と治療内容,そして原発担当主治医からの説明内容を確認する.
必要な検査とその所見
①画像検査:局所の評価は単純X線検査が基本である.多く