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トピックス 骨・軟部腫瘍に対する分子標的治療薬
平賀 博明
(国立病院機構北海道がんセンター 統括診療部長〔札幌市白石区〕)

 細胞分裂など,正常細胞にもみられる普遍的な細胞の活動を阻害する細胞障害性抗がん剤に対し,各疾患の病態特異的に生じている分子を標的とし,それらを阻害することにより病状の改善を目指す薬剤のことを分子標的治療薬という.他領域で目覚ましい発展をみせている分子標的治療薬であるが,骨・軟部腫瘍領域では2剤が国内で保険収載されている.1剤は「悪性軟部腫瘍」に対するパゾパニブ(ヴォトリエント®)であり,もう1剤は「多発性骨髄腫による骨病変および固形癌骨転移による骨病変」と「骨巨細胞腫」に対するデノスマブ(ランマーク®)である.

 パゾパニブは,血管内皮増殖因子と血小板由来増殖因子に対するチロシンキナーゼ阻害薬である.第Ⅲ相試験であるPALETTE試験において脂肪肉腫を除く悪性軟部腫瘍に対して,プラセボの無増悪生存期間中央値が1.6か月であったのに対し,パゾパニブでは4.6か月であり,3か月の延長が示されたため保険収載された.国内ではすべての悪性軟部腫瘍に使用可能である.デノスマブはヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤である.多発性骨髄腫と固形癌骨転移による骨病変,および骨巨細胞腫において,骨破壊の主要な役割を担う破骨細胞をRANKリガンド(RANKL)が分化誘導するが,デノスマブはその中和抗体である.乳癌患者において,骨関連事象(病的骨折,骨転移に対する放射線療法や手術,および脊髄圧迫と定義)の発生までの期間をゾレドロン酸に比べて18%遅らせるなど,複数のがん種を対象とした大規模な臨床試験を通じて骨転移に対する標準的な治療薬になった.また,再発もしくは切除不能の骨巨細胞腫に対して,デノスマブの投与により高い奏効率が得られ,骨巨細胞腫に対する唯一の薬剤となっている.有害事象として低カルシウム血症が発生する可能性があるので,カルシウムおよびビタミンDを必ず併用する.また,顎骨壊死も報

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