診療支援
治療

アパタイト結晶沈着症
Apatite crystal deposition disease
浜田 純一郎
(桑野協立病院 部長〔福島県郡山市〕)

【疾患概念】

 関節周囲の腱,滑液包,関節内に沈着したアパタイト結晶が急性炎症を誘発する疾患である.カルシウム,リンと酸化脂質の複合体からアパタイト結晶に成長・自己増殖し石灰を形成する.本症の多くは石灰性関節周囲炎,石灰性腱炎,石灰性滑液包炎であり,関節内アパタイト結晶沈着症は少ない.透析患者や強皮症,皮膚筋炎などの膠原病に合併する二次性アパタイト結晶沈着症や,巨大な石灰腫瘤になる腫瘍状石灰(沈着)症も報告されている.

【病態】

 肩石灰性腱炎では,腱板内の石灰が肩峰下滑液包に排出され白血球に貪食されると急性滑液包炎を生じる.本症の病態は,アパタイト結晶により誘発された急性炎症である.急性炎症に伴い結晶はマクロファージに貪食・吸収されるか,または溶解し石灰は消失し急性炎症も消退する.大きな石灰では関節運動,筋収縮,腱滑走の障害となる.


診断のポイント

 本症の発症年齢は40~60歳代である.好発部位は80%が肩関節であり,その他股関節,膝関節,手PIP・MCP関節にも発症する.誘因なく突然発症した激しい関節痛に加え,単純X線上で石灰像があれば本症を疑う.石灰像が認められても無症状であることも多い.石灰の周囲に局所麻酔薬を注射し症状が軽減すれば,本症である確率は高い.石灰物質が炭酸アパタイト結晶であることを証明すれば,確定診断となる.


治療法

 肩石灰性腱炎であれば,肩峰下滑液包に局所麻酔薬とステロイドを注射する.その他の関節も,超音波下もしくはX線透視下に石灰部位に同薬剤を注射する.また消炎鎮痛薬の内服と安静が必要である.大きな石灰や関節・筋・腱の機械的刺激になる石灰には,穿刺術,対外衝撃波,外科的摘出術を行う.


患者説明のポイント

 必ず治る疾患であること,激痛も2週間で軽減することを説明し安心させる.大きな石灰の場合には,石灰穿刺術や外科的摘出術の可能性にも言及しておく.




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