診療支援
治療

強直性脊椎炎
Ankylosing spondylitis
岸本 暢将
(杏林大学 准教授(腎臓・リウマチ膠原病内科))

【疾患概念】

 脊椎関節炎(SpA)に共通する強直性脊椎炎〔AS;=radiographic axial SpA(r-axSpA)〕の病態は,関節または脊椎の骨に靱帯,腱,関節包が付着する部位の炎症(付着部炎)である.付着部の炎症が二次的に関節炎をきたし,骨破壊や骨新生を惹起し,長期に持続すると非可逆性の関節破壊や強直をもたらす.

【頻度】

 わが国のHLA-B27陽性率はきわめて低く(約0.3%),AS有病率は,0.01%と報告されていたが,昨今の検査法や治療の進歩によって,認知度が高まり,SpA全体ではまれな疾患ではなくなった.男女比は3:1~9:1の割合で男性に好発し,発症年齢は40歳未満がほとんどで,罹患率のピークは20~30歳である.

【臨床症状】

 症状はSpAの各疾患によって若干異なるが,①関節所見,②関節外所見を中心に解説する.

(1)関節所見

 ①体軸関節症候(仙腸関節や脊椎の炎症):“腰痛持ち”ということで見逃されていることが多く,スポーツ後など活動で増悪する通常の腰痛と異なり,“炎症性腰背部痛”の所見〔ASAS基準:(1)発症が40歳以下,(2)緩徐発症,(3)運動で改善する,(4)安静で改善しない,(5)夜間疼痛(起床で改善する)の5項目中4項目を満たす場合,SpAの診断感度77%,特異度91.7%〕を有する場合には“ただの腰痛”や“ヘルニア”と決めつけず,SpAを念頭に診療を行う.仙腸関節炎では,大腿後部に放散痛を伴う殿部痛として発症することもある.その後進行すると胸椎,頚椎にも病変が及び,頚部痛,胸背部痛やこわばりなどの訴えもみられるようになる.

 ②下肢優位の末梢関節炎:ASではその頻度は約30~40%と高くないが,通常は股関節,膝,足首や足趾など下肢優位の左右非対称性関節炎を認める.関節リウマチ(RA)患者において罹患関節の約90%がMCPやPIP関節などの

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