診療支援
治療

糖尿病性関節症
Diabetic osteoarthropathy
大野 久美子
(東京大学医科学研究所附属病院 助教(関節外科))

【疾患概念】

 糖尿病性関節症は,糖尿病に合併して発症する関節症の総称であり,神経病性関節症の代表である.糖尿病の合併症である神経障害,末梢循環障害,感染など多様な病態が関節症の病態を複雑化し,根治治療が困難になることがある.特に足関節やその末梢の関節で関節症を発症しやすく,糖尿病足(diabetic foot)ともよばれる.糖尿病性関節症は,体重の負荷を受ける足部の関節に多い.糖尿病性自律神経障害に由来する動静脈シャントによる骨関節の栄養障害や骨破壊,さらに感覚神経障害による外傷や脱臼変形の放置が原因と考えられているが,依然として不明な点が多い.

【頻度】

 神経病性関節症と同様に標準的な診断方法やX線画像評価が確立されておらず,不明な点もあるが,10年以上の罹病期間をもつ糖尿病患者の0.15~2.5%が関節症を有し,その30%が両側性に発症するという報告がある.さらに外傷歴のある糖尿病患者の25~50%は急速に関節症が進行するとされている.


問診で聞くべきこと

 糖尿病の罹病期間や治療状況,さらに糖尿病性合併症の有無などの糖尿病治療に関する問診は重要である.末梢神経障害により自覚症状が乏しいため,患者の愁訴がなくても,足部の症状の有無は確認することが重要である.自覚症状と他覚所見の乖離は,糖尿病性関節症の診断に有用である.


必要な検査とその所見

 糖尿病の診断や病状に関する検査を行う.さらに神経病性関節症の診断目的に,糖尿病性神経障害の診断も必要である.また治療方針を決定するために,関節の状態を評価する.糖尿病性多発神経障害の診断として,糖尿病性神経障害を考える会が作成した簡易診断基準(表6-9)があり,記載されている両側のアキレス腱反射の低下あるいは消失,両側内果の振動覚の低下などを確認する.関節症の病態に関しては,関節変形の安定性,皮膚潰瘍や感染の有無が重要である.画像所見であ

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