【疾患概念】
組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)の欠損により引き起こされる,遺伝性骨疾患である.単純X線検査で骨の低石灰化やくる病様所見を呈するにもかかわらず,血清ALP値の低下を認めることが本疾患の特徴である.
【臨床病型別の症状】
生命予後の悪い「周産期重症型」や「乳児型」(呼吸障害・痙攣・くる病様変化),胎児期から長管骨の弯曲などがみられるが生命予後良好な「周産期良性型」,低身長や骨痛が主な症状のため未診断例も多いと考えられている「小児型」や「成人型」,乳歯の4歳未満の脱落や歯周疾患のみがみられる「歯限局型」と,症状は多様である(図7-32図).
診断基準
(1)主症状
①骨石灰化障害:単純X線所見として骨の低石灰化,長管骨の変形,くる病様の骨幹端不整像.
②乳歯の早期脱落(4歳未満の脱落).
(2)主検査所見
ALP低値(成長期の小児:300IU/L未満).
(3)参考症状
①ビタミンB6依存性痙攣.
②四肢短縮,変形.
(4)参考検査所見
①尿中ホスホエタノールアミンの上昇(尿中アミノ酸分析の項目にある).
②血清ピロリン酸値の上昇.
③乳児における高カルシウム血症.
(5)遺伝学的検査
①確定診断,病型診断のためにTNSALP遺伝子検査を行うことが望ましい.
(6)参考所見
①家族歴.
②両親の血清ALP値の低下(妊婦においては,胎盤由来のALPのためALP値が上昇するので注意).
(7)確定診断
主症状1つ以上と血清ALP値低値があれば本症を疑い,遺伝子検査(保険適応)を行い確定診断する.
治療法
リコンビナントALP酵素補充薬アスホターゼアルファの投与.
治療上の注意
ビスホスホネートは,低ホスファターゼ症患者への投与後に骨症状が悪化し,非定型大腿骨骨折が起こったとの症例報告が複数存在するため,投与は避けるべきである.
患者説明のポイント
病型によって生命予後やQO