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治療

神経痛性筋萎縮[症]
Neuralgic amyotrophy
園生 雅弘
(帝京大学 主任教授(神経内科学講座))

【疾患概念】

 神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy;NA)は,1948年にParsonageとTurnerが初めて提唱した疾患概念であり,肩~上腕の急性の激痛に引き続いて,上肢筋萎縮・筋力低下をきたす疾患である.先行感染やワクチン接種が誘因となることからは自己免疫機序が想定されるが,激しい運動後など機械的誘因を思わせる例もある.かつて腕神経叢障害と考えられたが,最近では多発性単ニューロパシーと考えられている.


問診で聞くべきこと

 突然発症の激痛に加えて,夜間痛,肘を曲げて肩関節を内転内旋して痛みを我慢するflexion-adduction signなどを呈する.


診断のポイント

 ①頚椎症性筋萎縮症(cervical spondylotic amyotrophy;CSA)との鑑別が重要だが,筋力低下分布の詳細な検討が鑑別に役立つ.CSAではC5/6(近位型)あるいはC8中心(遠位型)の正確な髄節性の分布を示すが,NAでは髄節性ではなく多発性単ニューロパシーの分布を示す.腋窩・肩甲上・長胸神経支配筋などの近位筋障害例が典型とされるが,わが国ではむしろ,後骨間・前骨間・橈骨・正中神経支配筋(特に円回内筋と橈側手根屈筋)などの遠位筋障害例が多い.また,わが国ではNAよりもCSAのほうが圧倒的に多い.

 ②針筋電図検査は,臨床症候を補完して障害分布を明らかにできるほか,回復期に低振幅の新生運動単位電位が観察されれば,再生による良好な回復が期待できる.

 ③神経超音波で砂時計様のくびれが描出されると診断に役立つ.


治療方針

【1】保存療法

 急性期は強い痛みを呈するので,場合によってオピオイドも含む鎮痛薬を強力に用いる.急性期に副腎皮質ステロイドパルス療法,免疫グロブリン静注などの免疫治療も行われることがあるが,エビデンスは乏しい.

【2】手術療法

 かなりの例では,神経再生が生じ

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