【人工肩関節手術の概念】
人工肩関節置換術は,保存療法が功を奏さない変形性肩関節症に施行される.この人工肩関節には,腱板が温存されている肩関節に施行される解剖学的人工肩関節と,修復不能な広範囲腱板断裂や腱板断裂性関節症に施行されるリバース型人工肩関節の2種類がある.前者は腱板の機能によって人工関節の求心性が保たれるため非拘束型とよばれ,後者は腱板の代わりに,人工関節の回転中心を下方に下げることで生じる三角筋の過緊張状態によって,上腕骨ソケットを肩甲骨側骨頭に密着させて関節安定性を得るようになっている.回転中心が一定で,関節安定性に三角筋の常時の緊張を要するために,半拘束型とよばれる.
【肩関節症の病態】
(1)変形性肩関節症
骨棘形成,骨硬化像,関節変形という増殖性変化と破壊性変化が混在している.誘因なく発症してくる一次性のものと,骨折などの外傷後に発症してくる二次性のものがある.後者は外傷による関節内外の瘢痕により手術の難易度が高い.
(2)リウマチ性肩関節症
本疾患の病態は滑膜炎で,発症初期から疼痛のために肩の運動制限を呈する.運動負荷が加わらないため通常,骨萎縮傾向を示す.骨増殖性変化は認めない.
(3)修復不能な広範囲腱板断裂や腱板断裂性関節症
関節窩周辺と滑液包側で腱板の剥離操作を行っても,断端をフットプリントに縫着できないものを,修復不能な広範囲腱板断裂とよび,これに関節症性変化を伴うものを腱板断裂性関節症とよぶ.
問診で聞くべきこと
(1)痛みの性質
安静時痛,運動時痛,夜間痛のどの痛みあるのか?あるいはその組み合わせ,もしくはそのすべてがあるのかを尋ねる.安静時痛や夜間痛は,滑膜炎の存在を示唆する.安静時痛がなく,運動時痛を訴える場合は,腱板断裂に伴う求心性の障害によって生じるインピンジメントや,関節症性変化によって生じる関節適合性障害による痛みと推察する.
(2)日常生
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