診療支援
治療

鎖骨骨折
Clavicle fracture
仲川 喜之
(宇陀市立病院 病院長〔奈良県宇陀市〕)

【疾患概念】

 鎖骨骨折は全骨折の約10%,肩甲帯部骨折の2/3を占め,日常診療で最もよく遭遇する骨折の1つである.他の長管骨骨折と比較して骨癒合が得られやすいことや,変形治癒をきたしても機能障害が少ないことより保存療法が原則とされてきたが,近年,不安定型骨折では高率な偽関節,機能障害発生が報告されており適切な初期治療が重要である.

【分類】

 遠位端・骨幹部・近位端骨折に大別され,さらに細分類されている(図11-22).発生頻度は遠位端約15%,骨幹部約80%,近位端約5%である.


問診で聞くべきこと

 受傷機転,疼痛圧痛部位の聴取により容易に鎖骨骨折を疑うことは可能であるが,受傷機転聴取の困難な幼少児では肘内障との鑑別を要する.新生児鎖骨分娩骨折も知っておく必要がある.


必要な検査とその所見

 X線は骨折部位を中心に前後像,30°頭側斜位像の2方向撮影を行う.3D-CTは骨折形態の把握に有用である.鎖骨内外側骨端核は青年晩期まで存在し,同部の骨折は骨端線離開の形をとる場合もあり留意しておく.


診断のポイント

 転位が大きくなる立位でスリングを除去したX線撮影が望まれる.高エネルギー外傷では,肩甲帯部重複損傷,神経損傷,血管損傷に留意する.


治療方針

【1】鎖骨骨幹部骨折

 保存療法が原則であるが,開放骨折,神経血管損傷例は絶対的手術適応である.相対的手術適応として高度転位例(Robinson分類2B1,2,2cm以上の短縮),高齢者,女性,喫煙者,肩甲帯部重複損傷例などが挙げられる.

(1)保存療法

 スリングや鎖骨バンド固定を行い仮骨出現後は積極的に可動域訓練を行う.

(2)手術療法

 髄内釘法とプレート法に大別され成績はほぼ同等であるが,プレート固定では機能回復がやや早い反面,創部瘢痕・知覚障害,インプラント突出,抜釘後再骨折などの問題もあり,最小侵襲プレート固定(minimally invas

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