診療支援
治療

上腕骨骨幹部骨折
Humeral shaft fractures
河村 健二
(奈良県立医科大学附属病院・玉井進記念四肢外傷センター 准教授)

【疾患概念】

 上腕骨の中央で皮質骨に囲まれた管状の骨幹部で生じる骨折である.

【頻度】

 長管骨の骨幹部骨折のなかでは脛骨に次いで頻度の高い骨折である.若年者から高齢者まで幅広い年代で生じるが,20~30歳と65歳以上にピークがある.

【病型・分類】

 AO/OTA分類や骨折高位による分類が用いられる.

【臨床症状】

 上腕の腫脹,疼痛,変形,肩や肘を動かした際に骨折部で不安定性を認める.


問診で聞くべきこと

 受傷機転としてスポーツでの接触や交通事故などによる大きな外力が原因となることが多いが,投球や腕相撲が原因となることもある.手指のしびれ感や冷感,手関節および手指の動かしにくさがないかを確認する.解剖学的に橈骨神経麻痺が合併しやすいが,正中神経麻痺や尺骨神経麻痺もまれに合併することがある.


必要な検査とその所見

 まず単純X線写真を撮影し骨折型を判定する.第三骨片や長い骨折線を有する場合には治療法の選択のためにCT検査を行ったほうがよい.手指の冷感や色調不調を認める場合には,まず指先にパルスオキシメーターを装着し酸素飽和度を測定する.酸素飽和度の低下を認める場合には,上腕動脈損傷の合併が疑われるので,超音波検査や血管造影CT検査を行う(図12-3).


鑑別疾患で想起すべき疾患

 受傷機転が軽微である場合には,原発性腫瘍や転移性腫瘍による病的骨折を鑑別する.


診断のポイント

 単純X線写真は上腕骨全長が写るように2方向で撮影する.橈骨神経麻痺は手術操作でも生じ得るので,受傷時から麻痺が存在していたかどうかを必ず確認してカルテに記載しておく.


専門病院へのコンサルテーション

 治療方針が決まらない場合や神経麻痺の合併を認める場合には,専門病院に紹介する.動脈損傷を疑う場合には,緊急で血管修復手術が可能な専門病院に紹介する.


治療方針

 上腕骨骨幹部骨折は手術療法よりも保存療法のほうが骨癒合までの期間が短く

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?