診療支援
治療

肘関節脱臼
Elbow dislocation
辻 英樹
(羊ヶ丘病院 医長〔札幌市厚別区〕)

【疾患概念】

 通常骨傷のない,あっても軽微な肘関節単純脱臼と,骨折を伴って複合肘関節不安定症(他稿参照)を呈するものまでさまざまである.前者の90%以上が後方脱臼であり,以下単純後方脱臼について述べる.

【臨床症状,病態】

 通常,肘関節過伸展位で手をつき,肘頭が肘頭窩に衝突固定され,さらに肘の伸展を強制されて脱臼する(図13-3).この場合,内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)損傷を合併する.また軽度屈曲位で手をつき,肘関節に外反,回外,軸圧の複合外力がかかり,MCLは断裂せず外側側副靱帯(lateral collateral ligament;LCL)複合体が断裂して,後外側脱臼をきたす機序もある.


問診で聞くべきこと

 受傷機転,受傷肢位を聞き出せれば,診断の補助となる.


必要な検査とその所見

 単純X線像で診断は確定する.また,肘関節以遠の循環障害,神

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