診療支援
治療

靱帯損傷
Elbow ligament injury
島田 幸造
(JCHO大阪病院 統括診療部長〔大阪市福島区〕)

【疾患概念】

 肘関節は上腕骨,尺骨,橈骨の3つの骨から構成されるが,その基本構造は蝶番構造をとる腕尺関節の内外両側に側副靱帯があって,安定性の要となっている.内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)は,元来10~15°の外反を呈する肘関節において重要な安定化機構であり,特にその前方成分である前斜走靱帯(anterior oblique ligament;AOL)が肘の外反ストレスに対して最も重要とされ,これを損傷すると外反不安定性による機能障害が強い.外側側副靱帯(lateral collateral ligament;LCL)は,腕尺関節の肘関節の外側で輪状靱帯(annular ligament;AL)とともに橈骨を包み支えるような複合体(LCL complex)を形成し,内反だけでなく軸圧や回旋方向のストレスに対して抗する役割を担う.なかでも外側尺側側副靱帯(lateral ulnar collateral ligament;LUCL)とよばれる,腕尺関節を外側後方でつなぐ部分の機能が重要で,この靱帯成分の損傷・機能不全は,肘関節を伸展回外したときに後外側回旋不安定症(postero-lateral rotatory instability;PLRI)をきたす.

【分類】

 肘関節靱帯損傷には上記のごとく肘の内外側による違いのほかに,急性損傷と慢性損傷,また靱帯単独損傷と骨折などを伴う複合損傷とに分類される.なお,野球選手などに多くみられるスポーツ障害として有名な,慢性のMCL損傷の治療については他項に譲る.

【病態】

 MCL損傷は転倒時に地面に着いた手を支点として,あるいはスポーツ競技などで上肢を決められた状態で,肘関節に伸展外反を強制されて受傷する.一方,LCL損傷は肘関節をやや屈曲して手をついた状態で上体が肘を支点として回旋し,関節包

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