診療支援
治療

Madelung変形
Madelung deformity
村瀬 剛
(大阪大学 准教授)

【疾患概念】

 1987年にMadelungによって最初に報告された.橈骨遠位掌尺側部の成長障害に起因する橈骨遠位の橈・掌屈変形である.この成長障害の正確な原因はまだ不明であるが,橈骨遠位骨端尺側部の病変,および月状骨と橈骨遠位を結ぶ異常な靱帯構造(Vickers靱帯)の存在に起因すると考えられる.通常両側性であり,女性に多い.単発性にも家族性にも生じうる.Leri-Weill症候群に伴うことがあり,この場合はSHOX遺伝子の突然変異に起因する.典型的には青年期初期に臨床的な変形が明らかになる.

【臨床症状】

 橈骨遠位は背側凸の変形をきたし,尺骨頭は背側に突出する.手関節可動域は尺屈・背屈が減少する.前腕が正常よりも短くなることもある.このような臨床像にもかかわらず,機能障害は比較的軽いことが多い.進行した症例では,疼痛や手関節・前腕可動域障害,握力低下などの機能障害を伴う.


診断のポイント

 通常,10歳以降に変形が目立って医療機関を受診する.橈骨遠位の掌屈・尺屈変形と尺骨頭の背側への突出などの臨床所見,単純X線手関節正面像における橈骨関節面の尺側傾斜の増大と同関節面尺側部の陥凹,手根骨の掌尺側への移動,側面像における橈骨遠位の掌屈変形,尺骨頭背側脱臼,などの特徴的な所見から診断する(図14-8a).MRIではVickers靱帯の存在を確認できる.3D-CTは橈骨遠位の変形を立体的に把握するのに役立つ(図14-8b).繰り返す手関節への負荷が部分的な骨端閉鎖を起こして,同様の変形を呈することがある.


治療方針

 機能障害が軽微であれば定期的な経過観察を行う.日常生活動作を妨げる症状が生じれば手術を考慮する.変形の改善を患者が希望して手術を行うこともある.

 成長期であれば橈骨遠位骨端線尺側部の骨性架橋の切除(physiolysis)と脂肪移植,Vickers靱帯の切除を行うことで自

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