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手関節の機能解剖
Functional anatomy of the wrist
中村 俊康
(国際医療福祉大学 教授)

1.手関節の機能解剖

 手関節は橈骨手根関節(radiocarpal joint;RCJ),手根中央関節(midcarpal joint;MCJ),遠位橈尺関節(distal radioulnar joint;DRUJ)の3つの関節から構成される複合関節で,RCJとMCJで主に掌背屈,橈尺屈運動を,DRUJで回内外運動を担っている.ほかに豆状骨と三角骨間の豆状三角関節がある.DRUJと近位橈尺関節が前腕の関節と考えることも可能で,その場合は橈骨手根関節,手根中央関節,豆状三角関節の3つの関節から構成される.手関節専門家の間では手関節の運動は掌背屈,橈尺屈,回内外で,手関節はRCJ,MCJ,DRUJで構成されるとすることが一般的である.

 手関節を構成する骨には橈骨,尺骨,近位手根列を構成する舟状骨,月状骨,三角骨,遠位手根列を構成する大菱形骨,小菱形骨,有頭骨,有鉤骨および尺側手根屈筋腱内の種子骨である豆状骨がある(図15-1).近位手根列と遠位手根列には筋腱の付着がなく,中手骨以遠に腱が付着するため,掌背屈,橈尺屈の際に近位手根列と遠位手根列は介在骨(intercalated bone)として受動的な動きを呈する.遠位手根列の各骨は靱帯により強固に連結され,ほぼ一塊として動くのに対して,近位手根列の各骨間は骨間靱帯〔舟状月状骨間靱帯(scapholunate interosseous ligament;SLIL)と月状三角骨間靱帯(lunotriquetral interosseous ligament;LTIL)〕で連結され,多少の捻れを許容する.後述するように近位手根列の骨間靱帯が断裂すると近位手根列を構成する各骨が異常回転し,手根不安定症を呈する.

 手関節の掌屈には主に橈側手根屈筋,尺側手根屈筋および深指屈筋,浅指屈筋が働き,背屈には主に長・短橈側手根伸筋,尺側手根伸

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