【疾患概念】
有頭骨は手根骨の中央に位置し,近位の頭部には血管侵入がなく遠位から逆行性に栄養されるため,有頭骨骨折で血流が絶たれると頭部の骨壊死が生ずる可能性がある.
【頻度】
すべての手根骨骨折の1~2%程度.
【病型】
約半数は単独骨折である.受傷機転は手掌をついて転倒し手関節が過度に背屈され,有頭骨が橈骨背側縁に衝突し骨折する.
合併する骨折:橈骨骨折,三角骨骨折,有鉤骨骨折,月状骨周囲脱臼など.
Scaphocapitate syndrome(Fenton's syndrome):非常に珍しいが発表は多い.高エネルギー損傷で,手関節の過伸展により舟状骨骨折が生じ,次に有頭骨が骨折し,有頭骨近位骨片が90~180°回転する.
【臨床症状】
手関節背側の腫脹,圧痛.手関節可動域制限などを認める.
問診で聞くべきこと
受傷時の状況から受傷時の手関節の肢位を推測する.
必要な検査
①単純X線:手関節4方向(正面・側面・両斜位).
②CT撮影:詳細な評価のため.
診断のポイント
有頭骨骨折は見逃されやすい.単純X線で異常がなくても,手関節の腫脹,疼痛,可動域制限があればCT撮影を行うべきである.
治療方針
①転位がなければ,6週間のギプス固定で骨癒合が得られる.
②転位があれば,特に近位の骨折では正確に整復すべきである.正しい整復こそ有頭骨頭部への血流再開の唯一の条件とされる.手術は背側から進入するが.近位骨片の掌側転位が著しいときは掌側から進入する.整復してheadless screwなどで内固定する(図15-8図).近位骨片を摘出すると手根骨高が短縮し,手根虚脱を招くのですべきではない.
合併症
①偽関節では海綿骨移植しheadless screwなどで内固定を行う.
②近位骨片の壊死により月状有頭骨関節症が生じた場合,部分手根骨間固定術を行う.
患者説明のポイント
偽関節,近位骨片の壊死を生じる可能
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