【疾患概念】
尺骨頭が橈骨尺側切痕から逸脱した状態.方向により背側,掌側および長軸脱臼に分類される.単独脱臼はまれで,多くは橈骨遠位端骨折や骨幹部骨折に伴い脱臼する(Galeazzi脱臼骨折,図15-9図).手関節背屈位で手をつき回内ストレスが加わり橈骨の短縮と尺骨頭が遠位背側に脱臼する形態が多い.
【病態】
脱臼に伴い三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)の断裂を伴う.多くは尺骨小窩での断裂である.
問診で聞くべきこと
腱・神経損傷の合併に注意し,神経は特に尺骨神経障害を合併することがあり,しびれ,手指の運動障害をチェックする.
必要な検査とその所見
Ulnar head ballottement testにて尺骨頭の不安定性を調べる.X線撮影にて骨折の有無,CTにて脱臼方向,程度を確認する.さらにMRIにてTFCCほか軟部組織の損傷がないか検索する.
見落としやすい所見,鑑別診断
前腕長軸の脱臼骨折(Essex-Lopresti脱臼骨折)を見落とさないため,必ず前腕,肘の単純X線撮影を確認する.さらに手根骨骨折や月状三角骨間靱帯損傷の有無もチェックする.
診断のポイント
橈骨の骨折に気を取られ脱臼を見逃しやすい.画像診断だけでなく必ず患者の手関節,前腕を触診し,その肢位にも注意する.
専門病院へのコンサルテーション
麻酔下に徒手整復を行うが,本症は高度外傷であり必ず専門医のコンサルテーションを受ける.
治療方針
単独脱臼で,背側脱臼は回外方向へ掌側脱臼は回内方向へ回旋し整復する.整復できれば回内外中間位にて4~6週の外固定を行う.脱臼骨折例では手術を要する.
手術療法
橈骨遠位端,骨幹部の骨折はプレート固定を行う.そのうえで尺骨頭の不安定性をチェックする.不安定性があり尺骨茎状突起骨折を伴っていればまずこれを固定する.骨折のな
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