【疾患概念】
1910年にPreiserが,外傷後に生じた舟状骨の無腐性壊死を報告したのが始まりである.しかし,これらの症例の大半は舟状骨骨折後の偽関節であったことから,定義に関する混乱を招いた.近年は,非外傷性の特発性舟状骨壊死をPreiser病と呼ぶことが多く,厳密には舟状骨骨折後の壊死と特発性の壊死とを区別すべきである.
【頻度】
非常にまれな疾患であり,月状骨の無腐性壊死であるKienböck病と比べてもかなり頻度は低い.
【臨床症状】
患者は手関節の橈背側を中心とした痛みを訴える.いわゆるsnuffboxに圧痛,時に腫脹を認め,手関節の可動域制限も比較的早期から生じる.
問診で聞くべきこと
まず,仕事や趣味で手関節に繰り返しのストレスが加わっていないかを聞く.また,長期ステロイド治療により血行障害が起きうるため,ステロイド使用歴を聞く.また全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)などの膠原病で血管病変が起きうるため,既往歴も聞く.舟状骨骨折後の偽関節の除外をすべく,手関節外傷の既往を聞くのも重要である.
診断のポイント
・手関節の橈背側に圧痛・腫脹を認める.
・画像検査では手関節単純X線検査やCT検査で,舟状骨の骨硬化,圧潰,さらに進行すると分節化が認められる.
・早期診断のためにはMRIが有効で,T1・T2強調像において舟状骨は広範囲に低信号を示す.
・問診で明らかに舟状骨偽関節が疑われる症例は除外する.
専門病院へのコンサルテーション
手外科専門医のいる病院に紹介するのがよい.
治療方針
【1】保存治療
まずは保存治療を行う.前腕ギプスや手関節固定装具で局所安静とする.
【2】手術治療
保存治療で痛みの改善がない場合,手術を考える.舟状骨の圧潰が軽い症例では血管柄付き骨移植にて再血流化をはかる.舟状骨の分節化があったり圧潰が強い症例は
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