診療支援
治療

ひょう疽
Felon
千馬 誠悦
(中通総合病院 診療部長〔秋田市〕)

【疾患概念】

 指腹部の化膿性炎症である.指腹部は末節骨と皮膚の間に丈夫な線維性の隔壁があり,多数のコンパートメントを形成している.コンパートメント内に化膿性炎症が生じると膿瘍が貯留し,内圧が上昇して激しい疼痛が生じる.深部に炎症が波及すると末節骨骨髄炎,化膿性屈筋腱腱鞘滑膜炎へと感染が拡大する.

【臨床症状または病態】

 指腹部に感染による局所の発赤,腫脹,疼痛が生じる.コンパートメント内に膿瘍が貯留して内圧が上昇し激痛となる.


問診で聞くべきこと

 刺し傷が原因となることが多く,手指外傷の有無,刺創の既往を問診する.

 糖尿病の合併,ステロイド薬や免疫抑制薬を服用しているかどうかも聞いておく.


必要な検査とその所見

 単純X線写真像で末節骨の融解・破壊像とガス像の有無,超音波検査やMRI検査で膿瘍の有無と膿瘍の局在部位を同定する.炎症反応をみるため血液検査,切開排膿時には培養検査を行う.


鑑別診断で想起すべき疾患

 真菌症・湿疹・乾癬のような皮膚科疾患,ヘルペスウイルスによる指腹部感染.


専門病院へのコンサルテーション

 原因となる細菌によっては感染が重症化することがある.感染が深部に拡大すると骨髄炎になり,難治性となる.また腫脹が強い場合は,血行障害により指尖部が壊死に陥る危険もある.抗菌薬の投与で症状が改善しない場合は,早めに手外科専門医へ紹介すべきである.


治療方針

 初期では局所の安静をはかり,抗菌薬を投与する.抗菌薬の投与で感染の鎮静化が得られず,臨床所見や検査所見で膿瘍の貯留が判明すれば切開,排膿,洗浄を行う.膿瘍の直上皮膚を切開するが,切開による創瘢痕痛や指腹部の血行障害を避ける,片側のJ字型切開が勧められている.


患者説明のポイント

 抗菌薬で感染の鎮静化が期待できるが,効果がなく検査で膿瘍が明らかになれば,切開排膿する手術が必要となる.指腹部の感染ではあるが,抗菌薬で効果が得られない

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