【疾患概念】
手関節や指の腱および靱帯付着部に塩基性リン酸カルシウム(BCP)結晶が沈着し,急性炎症を引き起こす.
【病態】
中年期でやや女性に多く,急性の局所疼痛,腫脹,発赤を認める.固有指部の屈筋腱内に発症し弾発現象をきたすこともある.
問診で聞くべきこと
感染性疾患や裂離骨折との鑑別のうえで,先行する局所外傷歴の有無を聴取する.
必要な検査
単純X線撮影で石灰沈着を確認する.手関節周辺の石灰沈着では正側2方向に加えて斜位撮影が局在の確認に有益な場合もある.手術加療で沈着した液状石灰を摘出した場合は,偏光顕微鏡によりピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dihydrate;CPPD)結晶とは異なり,複屈折性を示さない結晶が確認できる.
診断のポイント
発症前に打撲など軽微な外傷を認める場合があるが,受傷から遅れて痛みや腫脹が急激に顕在化したり,外傷程度に比較し症状が強い場合は,石灰性(化)腱炎を疑う.単純X線写真において沈着した石灰陰影は,裂離した小骨片とは異なり透過性は一様で辺縁が丸く,注意深い観察により鑑別できる.手関節尺側部の石灰沈着では尺側手根屈筋・伸筋腱へ沈着した関節外病変よりも,三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)にCPPD結晶が沈着した関節内病変(偽痛風)のことが多い.
治療方針
【1】保存療法
まず,局所安静とNSAIDs投与を行う.シメチジン薬内服が著効する場合もある.改善がなければ,石灰沈着部位に水溶性ステロイドを局注する.石灰性(化)腱炎では,化膿性疾患と異なり,局所炎症所見の周辺拡大傾向は認めないため,化膿性疾患と鑑別し難い場合は,経過推移で確実に化膿性疾患を除外してからステロイド投与を行う.
【2】手術療法
慢性的な疼痛を認める場合や再燃を繰り返す場合は,切開し沈着した