1.整形外科を受診しうる神経内科的脊髄疾患
整形外科を受診しうる神経内科的脊髄疾患の代表的な症状は,四肢のしびれである.この「しびれ」とは多義語であり,必ずしも感覚障害を示しているとは限らず,放散痛を示している場合もあれば,時には運動障害を「しびれ」と表現する患者も多く,目の前の患者が訴える「しびれ」が何を意味しているのかを捉えることが,診察のはじめの一歩となる.
このような「しびれ」を訴え,整形外科を受診しうる代表的な神経内科的脊髄疾患として,多発性硬化症,急性横断性脊髄炎,筋萎縮性側索硬化症,遺伝性痙性対麻痺,脊髄梗塞などが挙げられる.これらの疾患では,画像上変性所見を併せて持つ場合も多く,鑑別が困難な場合も少なくない.
整形外科医の診療において重要なことは,常にこれらの疾患の可能性を念頭に置きながら神経診察を行うことである.判断に迷うときは,神経内科医へのコンサルテーションを優先すべきである.
2.脊髄疾患診断の進め方
【1】問診
発症時期・機転,外傷の有無,進行の程度・スピード,既往歴などを詳細に聴取する.圧迫性脊髄病変では,外傷機転がない限り麻痺の進行は緩徐である.外傷機転を伴わずに急激な麻痺の進行がみられる場合には,脊髄梗塞や血管障害(動静脈奇形からの出血など)を疑う.1~数日間で麻痺が進行している場合には,急性横断性脊髄炎や多発性硬化症などの神経内科的疾患のほか,硬膜外膿瘍や硬膜外血腫なども鑑別疾患として考える.
【2】神経学的評価
必ず運動障害,感覚障害,深部反射の3つの要素を評価し,総合的に判断する.これらの3つの要素が髄節レベルの障害として説明できるかどうかが重要なポイントとなる.これらの神経学的診察の結果,MRIなどの画像所見において,想定される障害髄節高位と一致する脊髄圧排所見がみられれば,圧迫性脊髄病変と考えて差し支えないが,両者に乖離がみられる場合には
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