診療支援
治療

脊髄髄内腫瘍
Spinal intramedullary tumors
豊田 宏光
(大阪市立大学大学院 准教授(総合医学教育学))

【疾患概念】

 脊髄の内部から外部にかけて発生する腫瘍.

【頻度】

 脊髄硬膜内腫瘍の15~20%を占め,上衣腫が最も多く,星細胞腫,血管芽腫が続く.まれに,乏突起細胞腫,脂肪腫,髄内神経鞘腫,海綿状血管腫,転移性脊髄内腫瘍などがある.小児では星細胞腫が多い.

【病型・分類】

 WHOの組織学的分類では,grade 1は増殖能力が低く外科切除のみで治癒可能,grade 2は周囲の組織に浸潤するためしばしば再発の可能性がある腫瘍,grade 3は組織学的に悪性所見を示す腫瘍,grade 4は悪性で壊死を起こしやすく予後が非常に悪い腫瘍となっている.

 上衣腫はgrade 2に属し頻度は髄内腫瘍の60%と報告されている.40~50歳代,頚髄から頚胸髄に好発する.その他の上衣腫系腫瘍として馬尾に生じる粘液乳頭状上衣腫(grade 1),上衣下腫(grade 1),退形成性上衣腫(grade 3)が存在する.

 星細胞腫は若年者の頚髄から頚胸髄に発生しやすい.毛様細胞性星細胞腫(grade 1),びまん性星細胞腫(grade 2)が大半を占め,他の星細胞系腫瘍として退形成性星細胞腫(grade 3),脊髄膠芽腫(grade 4)が存在する.

 血管芽腫はgrade 1に属し頻度は3~8%と報告されている.40~50歳代,胸髄,頚髄に発生しやすい.孤発性が多いが,20~30%はvon Hippel-Lindau病(VHL)を基盤に持つと言われている.VHLを基盤に持つ場合,脳,網膜,副腎,腎臓,膵臓に腫瘍や嚢胞を合併していないか,家族歴がないかを評価する必要がある.

【臨床症状または病期】

 初発症状としては疼痛や感覚異常が多く,腫瘍の増大に伴い脊髄症状を示す.緩徐に進行するが,腫瘍内や周囲に出血を生じた場合は症状が急速に進行する.


問診で聞くべきこと

 いつから,どの部位から,どのような症状が出現し,どの

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