診療支援
治療

脊髄くも膜嚢腫
Spinal arachnoid cyst
岩渕 真澄
(福島県立医科大学会津医療センター 教授)

【疾患概念】

 脊髄くも膜嚢腫(以下,本疾患)は,先天性あるいは種々の炎症,出血,外傷など二次的変化により硬膜内に発生する嚢腫性病変である.本疾患は,1903年にSpillerloにより最初に報告された.その後,MRIの普及に伴い数多くの報告がされてきた.先天性の場合,Marfan症候群,Ehlers-Danlos症候群,および神経線維腫症などの結合織異常をきたす疾患との関連を示唆する報告も多く,何らかの先天性素因も関与しているものと思われる.発生部位では硬膜外くも膜嚢腫,脊髄くも膜嚢腫,神経根嚢腫,および仙骨嚢腫がある(図17-8a,b).発生部位はそのほとんどが脊髄背側であり,胸椎発生が最も多い.

【病態】

 脊髄や馬尾・神経根を圧迫し,神経障害をきたすことがあるほか,まれに硬膜を破って硬膜外に及び,硬膜外腫瘍と同様の症状をきたすこともある.最も頻度の高い症状は,下肢のしびれと脱力,および局所の疼痛である.頚胸椎高位に発生した場合には痙性麻痺をきたす.進行すれば排尿障害をきたす.


問診で聞くべきこと

(1)自覚症状

 上肢や下肢のしびれと脱力,および巧緻障害の有無について確認する.歩行障害の確認も重要で,平地や階段で支持を必要とするかどうかにつき確認する.


必要な検査とその所見

(1)身体所見

 最初に痙性歩行の有無とRomberg徴候について確認する.次に四肢腱反射,および感覚障害と筋力低下の程度と範囲から,神経学的に罹患高位を推察する.

(2)画像所見

①単純X線写真

 神経線維腫症に合併したくも膜嚢腫の場合,側弯や椎弓根間距離の拡大,および脊柱管前後径の拡大が認められることがあるため,側弯の有無,椎弓根間拡大の有無,および脊柱管前後径について観察する.

②MRI

 硬膜管内の脊髄周囲や馬尾周囲,および神経根周囲にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号の嚢腫様病変があるかどうかを確認する.病

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