診療支援
治療

脊髄出血
Spinal hemorrhage
小林 洋
(福島県立医科大学 学内講師)

【疾患概念】

 脊髄出血性疾患は,部位別に,硬膜外出血,硬膜下出血,くも膜下出血,および脊髄内出血に分類される.

【病型・分類】

(1)硬膜外出血

 小児を含む全年齢に認められ,好発部位は上位胸椎と下位頚椎である.外傷,凝固異常などが原因となることもあるが,多くは原因不明の特発性である.怒責などが誘因となり,出血高位に一致した背部痛あるいは腰部の激痛に始まり,短時間で脊髄麻痺が出現することが多い.ときに,前兆となる小発作があり,その後に大発作が出現することもある.

(2)硬膜下出血

 まれであるが,外傷,凝固異常,腰椎穿刺や硬膜外麻酔による医原性の症例,および特発性がある.

(3)くも膜下出血

 脊髄硬膜動静脈瘻,脊髄辺縁部動静脈瘻が原因で,突発性の発症形態になる.脊髄腫瘍によることもある.急性の腰背部痛,根性疼痛で発症する.脊柱可動域制限のほかに,髄膜刺激症状としての項部硬直,Kernig徴候を認めることがある.頭蓋内くも膜下出血とは異なり,背腰痛などが頭痛に先行しており,意識レベルに異常は認められない.全くも膜下出血の1%とまれである.

(4)脊髄内出血

 脊髄動静脈奇形,脊髄辺縁部動静脈瘻,髄内腫瘍に伴うことがある.外傷例も少なくない.頚髄,腰髄部に多い.出血は後角周辺を中心とした脊髄灰白質に発生し,数髄節に及ぶ.くも膜下出血を合併することもある.症状の発現は一般に急速である.突然の背部の激痛に続いて,数時間以内に障害高位以下の脊髄障害が発生する.


問診で聞くべきこと

 痛みの部位や,運動感覚障害,膀胱直腸障害の有無を確認する.麻痺に先行する疼痛は重要な所見である.発症の誘因と経時的な推移を確認する.また,凝固異常をきたす既往も聴取する.


必要な検査とその所見

(1)MRI(図17-9)

 必須の検査である.出血部(血腫)は,ヘモグロビンの化学的変化を反映する.48時間以内の急性期ではT1強調像

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