診療支援
治療

癒着性くも膜炎
Adhesive arachnoiditis
村上 秀樹
(岩手医科大学 特任教授)

【疾患概念】

 脊髄癒着性くも膜炎(spinal adhesive arachnoiditis;SAA)では,脊髄周囲の慢性炎症により,くも膜および神経組織の広範な癒着と瘢痕形成が生じ,髄液の潅流障害あるいは脊髄の血流障害が惹起される.結果的にくも膜嚢胞,脊髄空洞症,脊髄軟化症が合併し,緩徐に進行する神経障害を呈する.原因としては髄膜炎などの感染によるもの,脊髄造影剤,硬膜外麻酔薬やステロイド注入などの化学物質刺激によるもの,脊髄外傷,脊髄・脊椎手術,くも膜下出血,腰椎穿刺などの機械的刺激によるものが報告されている.

【臨床症状】

 脊髄癒着性くも膜炎に特有の症状はないが,緩徐に進行する脊髄症状が特徴とされる.硬膜から脊髄表面の間が癒着し,くも膜下腔の血管の閉塞を起こし,脊髄への血流が徐々に障害されることが要因の1つと考えられている.また,くも膜下腔の髄液潅流障害により髄内に嚢胞性変化が生じ,脊

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