診療支援
治療

癒着性くも膜炎
Adhesive arachnoiditis
村上 秀樹
(岩手医科大学 特任教授)

【疾患概念】

 脊髄癒着性くも膜炎(spinal adhesive arachnoiditis;SAA)では,脊髄周囲の慢性炎症により,くも膜および神経組織の広範な癒着と瘢痕形成が生じ,髄液の潅流障害あるいは脊髄の血流障害が惹起される.結果的にくも膜嚢胞,脊髄空洞症,脊髄軟化症が合併し,緩徐に進行する神経障害を呈する.原因としては髄膜炎などの感染によるもの,脊髄造影剤,硬膜外麻酔薬やステロイド注入などの化学物質刺激によるもの,脊髄外傷,脊髄・脊椎手術,くも膜下出血,腰椎穿刺などの機械的刺激によるものが報告されている.

【臨床症状】

 脊髄癒着性くも膜炎に特有の症状はないが,緩徐に進行する脊髄症状が特徴とされる.硬膜から脊髄表面の間が癒着し,くも膜下腔の血管の閉塞を起こし,脊髄への血流が徐々に障害されることが要因の1つと考えられている.また,くも膜下腔の髄液潅流障害により髄内に嚢胞性変化が生じ,脊髄空洞症が合併するために多岐にわたる症状が緩徐に進行すると考えられている.特に,持続性の根性疼痛,解離性感覚障害や下肢痙性などの症状を呈することが多い.


必要な検査と所見

 画像検査では,以前は脊髄造影検査によるくも膜下腔の不規則なブロック像や嚢胞状の拡大が特徴的といわれていたが,現在ではMRI検査が必須である(図17-11).T2強調像で一般的に認められる脊髄と,くも膜下腔の髄液との境界が不明瞭となり消失した所見を呈する.それに隣接した部位のくも膜下腔は嚢胞状の拡張を示し,髄内には脊髄の浮腫,軟化,壊死などを示す高信号域を認める.脊髄空洞症もT2強調像で高信号域として認められるが,T1強調像でも同部位が境界明瞭な髄液と同一の低信号域であることを確認する必要がある.T2強調像高信号の所見だけで脊髄空洞症と診断してはいけない.


診断のポイント

 MRIにて局所的なくも膜下腔の拡大と脊髄圧排を認める

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