診療支援
治療

筋萎縮性側索硬化症
Amyotrophic lateral sclerosis (ALS)
村松 慎一
(自治医科大学 オープンイノベーションセンター 神経遺伝子治療部門 教授)

【疾患概念】

 上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が散発性・進行性に脱落する神経変性疾患である.一部の患者では認知症を呈し,前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration;FTLD)と同一のスペクトラムを構成する.遺伝子変異のある特殊な例を除き,RNA結合蛋白質TDP43の異常凝集体が神経細胞に認められることから,TDP43プロテオパチーとして病態研究が進められている.

【頻度】

 10万人あたりの有病率は7~11人,年間の発症率は1.1~2.5人,男性は女性の1.3~1.4倍と推定されている.40歳以降の発症が多い.

【病型・分類】

 上位・下位運動ニューロン徴候が四肢・体幹・脳神経領域に進展していく古典型と,初期に四肢の症状が目立たない進行性球麻痺型を基本とする.しかし,上位運動ニューロン徴候を欠くもの,下位運動ニューロン徴候を欠くもの,片麻痺や球麻痺のみで進行が遅いもの,認知症を伴うものなどがある.

【臨床症状】

 上位運動ニューロン徴候として筋伸張反射亢進,痙縮,病的反射,下位運動ニューロン徴候として筋萎縮,線維束収縮を多髄節にわたって認める.典型例では,一側上肢遠位部の筋力低下で初発し,筋力低下・筋萎縮が同側近位部,対側遠位部,下肢,脳神経領域へと波及する.進行性球麻痺型は,嚥下障害と構音障害が増悪するが,初期には四肢の筋力は保たれる.


問診で聞くべきこと

 5~10%は家族内発症するので近縁者の類症,血族結婚などを問う.線維束収縮を自覚していることが多いので,その部位を問う.食事量の減少などの嚥下機能の低下や,朝方の頭痛,夜間覚醒,日中の眠気などの呼吸筋麻痺の症状に注意する.


必要な検査とその所見

(1)脳・脊髄MRI

 他疾患の除外のために行う.T2強調像で錐体路の高信号,拡散テンソルの変化が認められる場合がある.

(2)針筋電図

 急性脱

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