【疾患概念】
環椎が軸椎に対して回旋した位置にあり後天性に斜頚を呈するものを環軸椎回旋位固定という.後咽頭腔や歯突起周囲の炎症や外傷が契機となり,程度によっては靱帯損傷をきたして環軸関節が亜脱臼する.炎症が原因の場合はGrisel症候群ともよばれる.6~12歳に好発し,急性期には強い運動時痛と頚椎可動域制限を伴い,いわゆるcock robin positionを突然呈するようになる.軸椎棘突起の圧痛,斜頚と同側への軸椎の転位,片側の後頭部痛を伴うことがある.発症から時間が経過している例では強い疼痛は消失している.
問診で聞くべきこと
本疾患の原因となりうるエピソードの有無,すなわちごく軽微なものを含む頚部への外傷の有無,先行感染(上気道感染,咽頭炎,中耳炎,咽後膿瘍,頚部リンパ節炎など)の有無,耳鼻咽喉科疾患術後(アデノイド口蓋扁桃摘出術,咽頭形成術,耳疾患に対する手術など)ではないかを問診する.ほかの後天性斜頚との鑑別のために既往歴も聴取する.また,治療方針を考えるうえで発症時期を聴取することも大切である.
必要な検査とその所見
臨床所見では,神経症状や感染徴候を伴っていないかを注意深く診察,評価する.契機として炎症を疑う場合,頚部リンパ節の腫大や耳下腺の腫脹を伴うことがあるため,触診で確認し,検温,血液検査などで炎症所見を確認する.頚椎単純X線像では,環椎と歯突起との位置関係が左右非対称にみえる.環軸関節は開口位撮影でよく描出されるが,可動域制限のために撮影肢位がとれず撮影困難なことが多い.側面像では,環椎歯突起間距離(atlantodental interval;ADI)と後咽頭腔幅(軸椎椎体前下縁と咽頭後壁の距離)を計測する.小児では前者は4mmまで,後者は2~7mmが正常範囲である.後者が増大している場合は,後咽頭膿瘍や出血などを疑う.診断には頚部の肢位に左右されずに
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