【疾患概念】
痙性斜頚は,頚部の局所性ジストニアで,頚部筋の不随意な常同的収縮による頚部の運動や頭位の異常である.頭部の偏倚は一定のパターンがあり,また特定動作で症状が発現する動作特異性がみられる.不随意に一定方向に頭部が偏倚していくこともある.起床時の症状改善の有無や手などを軽く顎に添えるだけで症状が改善する感覚トリックがみられることがある.
【臨床症状と病態】
異常姿勢は,回旋,側屈,前後屈,肩の挙上,側弯があり,複数の組み合わせで出現する.発症後数か月~数年は進行するが,その後は安定することが多い.ジストニアの特徴は,①常同性,②動作特異性,③感覚トリック,④共収縮,⑤オーバーフロー現象,⑥早朝の症状改善が挙げられる.機序は大脳基底核を中心とする運動ループの機能異常が考えられており,皮質運動野内抑制の障害,周辺抑制の障害,感覚運動連関の異常,神経可塑性の異常や小脳機能異常などが考えられている.
問診で聞くべきこと
①頭部の偏倚方向,振戦などの経過,②安静時だけでなく症状が発現しやすい精神的負荷や特定動作,歩行時での悪化,③起床時の改善,④感覚トリックの有無を確認する.
必要な検査とその所見
写真,動画により偏倚を確認する.表面筋電図でジストニア放電を検討する.筋CTや筋MRIで筋腫大がみられ診断に有用である.鑑別診断のため脳脊髄MRIが必要である.
診断のポイント
診断は,特発性,薬剤性,症候性や心因性斜頚などを鑑別する.臨床症状,経過,表面筋電図でジストニア放電がみられ,他の原因を鑑別し特発性痙性斜頚と診断する.薬剤性(遅発性ジスキネジア)は抗精神病薬,抗不安薬などの服用歴がある.症候性では,神経筋萎縮疾患での前屈,Parkinson病,多系統萎縮症などの神経変性疾患で後屈がみられる.状況により変化する心因性斜頚,偽性斜頚(筋性斜頚,眼性斜頚,拘縮・骨格異常)などが挙げられ
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