診療支援
治療

急性頚部椎間板石灰化症
Cervical intervertebral disc calcification in children
嶋村 佳雄
(田中脳神経外科病院脊椎脊髄外科部長〔東京都練馬区〕)

【疾患概念】

 小児椎間板石灰化症は1924年Baronが最初に報告した疾患で,これまでに国内外で約400例近くの報告がある.椎間板石灰化症は成人ではしばしばみられるものの無症状が多く,これに対し小児ではまれではあるがほとんどが急性発症し,頚椎発症例が多い.頚部の激痛を伴い受診することが多いが,ほとんどの症例において保存治療により自然軽快治癒する予後良好な疾患である.

【病態】

 椎間板石灰化症は小児と成人では病態は大きく異なる.成人の場合多くは加齢性変化であり,主に線維輪に生じ自然消退することはない.一方,小児の椎間板石灰化症は主に髄核に生じ自然消退する.石灰化の機序は現時点では不明であるが,感染や外傷を機に病変部位周囲の酸素分圧,pH,血流などに影響を及ぼして骨誘導因子などが血流を介して髄核内に移行することで石灰化が生じる可能性や,もともと髄核内にある石灰化構成物質が,感染や外傷により髄核内圧が上昇することで石灰化するのではないかと推測されている.

【臨床症状】

 男女比は3:2で男性に多く発症年齢は3~13歳にみられている.

 発生部位は中下位頚椎に多く,単椎間発生例は65%,2つ以上の多椎間発生例は35%と報告されている.症状を有するのはほぼ全例が頚椎発症で,最も多い症状は頚部痛と頚椎運動制限であり,発熱や斜頚,頚部リンパ節軽度腫脹,ときに咽頭・嚥下痛などの症状がみられる.非常にまれではあるが,神経根症や脊髄症と思われる症状を認めることがある.Eyringの6徴候(表19-2)が提唱されている.


問診で聞くべきこと

 発症前の外傷の有無と先行する小児特有の感染症状の有無は参考になる.


必要な検査とその所見

 発熱や咽頭喉頭,頚部の腫れを認める場合は血液検査および感染症に対する一般的な検査は必要である.頚部椎間板石灰化症は急性炎症の指標である白血球,CRP,血沈の上昇がみられることが多

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