診療支援
治療

頚椎屈曲性脊髄症
Cervical flexion myelopathy
出村 諭
(金沢大学附属病院 准教授)

【疾患概念】

 頚椎屈曲性脊髄症(cervical flexion myelopathy;CFM)は,頚椎の前屈時に脊髄が圧迫,もしくは伸張された状態での脊髄障害を総称し,病態を重視した疾患概念である.また,若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)は,CFMに関連する一臨床病型として位置づけられている.

【病態】

 CFMの主な病態としては以下の説が唱えられている.①脊椎と脊髄長の不均衡による頚椎前屈時の脊髄overstretch mechanism説.②頚椎前屈により脊髄が前方へ偏移し,椎体や椎間板と接して圧迫を受けるcontact pressure説.③頚椎前屈により,硬膜後方部分の前方移動により脊髄が圧迫を受けるtight dural canal in flexion説.以上により頚髄前角細胞の循環障害などが関与し症状を引き起こすと考えられている.その他,硬膜管の組織変化などのコラーゲン代謝異常,硬膜外静脈叢の異常,アトピー素因との関連も指摘されている.CFM,平山病ともにわが国からの報告が多く,若年男性の発症が圧倒的に多い.

【臨床症状】

(1)上肢運動障害,筋萎縮

 上肢遠位筋の筋力低下,特に手内在筋の筋萎縮,小指の内転障害,握力低下などがみられる.一側優位の筋萎縮が大多数を占めており,両側性の筋萎縮は少ない.

(2)知覚障害

 下位頚髄レベルの髄節支配領域以下の知覚障害(上肢尺側,体幹,下肢)がみられることがあるが,ごく軽度であることが多い.

(3)下肢錐体路徴候

 下肢深部腱反射亢進,痙性歩行,病的反射を認めることがあるが,CFMに特徴的な所見はない.

(4)その他

 寒冷時の手指脱力,手指振戦,手の発汗異常などが報告されている.


必要な検査とその所見

(1)単純X線,脊髄造影CT(図19-18a~d)

 中間位では頚椎前弯の消失や後弯化を認めることが多く,脊髄造影CTでは,背側硬膜の前方偏位お

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