【疾患概念・病態】
滑膜に発生した炎症が組織を破壊することが,関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の病態の基本であるため,頚椎においても滑膜組織が存在する椎間関節や歯突起(環軸関節)周辺に病変が発生しやすい.滑膜組織が存在しない組織においても慢性的な炎症が波及し,椎体周囲に存在する靱帯の弛緩や断裂,椎体終板や椎間板の炎症,椎体内の骨脆弱化が生じる.結果として頚椎の骨性支持機構が破綻し,環軸関節亜脱臼,環軸関節垂直性亜脱臼,軸椎下亜脱臼(中下位頚椎のすべり)や椎体圧潰,椎体癒合など種々の頚椎変形が複合的に発生する(図19-20図).また環軸関節から発生した炎症性肉芽組織が脊髄を圧迫する場合もある〔歯突起後方腫瘤(図19-21図)〕.
生物製剤の使用によってRA自体のコントロールが良好になり,頚椎病変の発生頻度は著しく低下している.しかしながら,未治療例や生物製剤を使用しても治療効果が得られないケースでは,頚椎病変は高頻度に発生するため注意深い経過観察が必要である.
【臨床症状】
主たる症状を列挙すると,
①頚椎の変形や脱臼に伴う頚部の痛み,可動域制限
②脊髄および神経根の圧迫によって生じる脊髄症状(四肢麻痺)と神経根症状(頭頂部,後頭部,耳介部の痛み,頚部から手指あるいは肩甲骨の内側に放散する痛みやしびれ)
③環軸関節垂直性亜脱臼で生じる延髄の圧迫に起因する呼吸障害(睡眠時無呼吸)および嚥下障害
④頚椎の変形や脱臼による椎骨動脈の血流障害を起因とするめまい,耳鳴り
などがある.
問診で聞くべきこと
前項で示した臨床症状の有無を聞き,原因を究明することはもちろんであるが,早急に治療が必要となる脊髄症の発症を見逃さないことが最も重要である.しかし,脊髄症を発症するケースは四肢の関節が高度に破壊されていて,筋力低下や腱反射亢進の有無,病的反射の出現など神経学的異常を確認
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