診療支援
治療

肋骨骨折,胸骨骨折
Fracture of the rib and sternum
小林 洋
(福島県立医科大学 学内講師)

【疾患概念】

 胸郭は,12個の胸椎に12対の肋骨が関節を作り,前方では肋軟骨によって胸骨と連結した籠状構造物である.第1~7肋骨は肋軟骨を介して胸骨に連結し,第8~10の肋軟骨はそれぞれの上位肋軟骨に連結し,第7肋軟骨へ融合し肋骨弓を形成する.第11,12肋骨は遊離端となる浮遊肋骨である.胸骨は胸骨柄と体部からなり,結合部を胸骨角といい,第2肋軟骨が付着する.

 肋骨骨折は日常生活で遭遇する頻度の高い骨折の1つであり(全骨折の6%),多くは数週間で治癒する単純な骨折である.血気胸,フレイルチェストなどの合併症にさえ注意すれば,予後の良好な疾患である.以前は交通事故や労災事故による骨折が多かったが,近年の高齢者人口の急激な増加に伴い,軽微な外傷による骨脆弱性骨折が増加している.

 胸骨骨折は比較的まれな骨折である(全骨折の0.2%).交通事故時にハンドル打撲で生じることが多く,ハンドル骨折とも呼ばれる.肋骨,肩甲骨,鎖骨,胸椎の骨折と合併していることが多い.

 これらの骨折は通常は保存的治療で対応可能である.しかし骨性胸郭の内部には,呼吸,循環の維持に重要な臓器である肺,心臓,大血管が存在するため,胸部外傷では気道,呼吸,循環の異常に直結した緊急性の高い病態が生じる可能性があり,診断と対応の遅れが防ぎ得た外傷死(preventable trauma death)へ直結することを念頭に置く必要がある.

【病型・分類】

(1)部位

 肋骨は骨性部,軟骨部および移行部の骨折がある.胸骨では柄部,体部および剣状突起部に分類される.肋軟骨骨折,移行部骨折は単純X線写真上では確認できないことが多く,理学所見で診断する.

(2)特殊な病態

①フレイルチェスト

 上下連続した肋骨をそれぞれ2か所以上骨折してできた骨連続性を失った胸壁部分が吸気(胸腔内陰圧)時に陥没し,呼気(胸腔内陽圧)時に膨隆する特徴的な胸壁

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