【疾患概念】
鎖骨,胸骨,肋軟骨周囲の前胸部を中心に,無菌性に骨肥厚を伴う骨硬化性病変を呈する慢性炎症性疾患である.手掌,足底の無菌性膿疱を主な皮膚症状とする掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis;PPP)に合併することが知られていて,掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis;PAO)とよばれてきた.一方,SAPHO(synovitis,acne,pustulosis,hyperostosis,osteitis)症候群は骨関節炎に無菌性膿疱を伴う炎症性皮膚疾患を合併した症候群に対して用いられる名称で,PAOを含む概念と定義され,本症はSAPHO症候群のなかの1つの疾患と考えられている.しかし,最近その病因論などから,PAOとSAPHO症候群は別の疾患概念である可能性も示唆されている.
【発生頻度】
40~60歳に好発し,男女比は約1:2と女性に多い.PPPの約10%に本症が発生し,最終的に50~60%に皮膚病変を伴うようになる.
【臨床症状】
胸鎖関節や胸肋関節を中心とした前胸部~鎖骨にかけての痛みと発赤,腫脹,熱感を認める.急性増悪期には非常に強い安静時痛があり,肩関節や体幹の動きに伴う運動時痛や深呼吸や咳での痛みも伴う.慢性期には,骨性隆起や肩関節可動域制限がみられる.PPP合併例では,両側手掌や足底に非感染性の小膿疱を認める.
問診で聞くべきこと
前胸部の熱感,腫脹,疼痛で受診した場合には,①痛みの強さと安静時痛や運動時痛,②全身性の発熱の有無,③手掌・足底の皮膚病変の存在と治療歴,④他の皮膚病変,⑤四肢関節の腫脹や疼痛,⑥腰殿部痛などの脊椎症状,⑦外傷の有無,⑧悪性疾患の既往を聴取する.PPPに影響を与える可能性のある1)扁桃炎,歯周炎などの病巣感染,2)金属アレルギー,3)喫煙歴なども聞いておく必要がある.
必要な検査
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