【疾患概念】
腰痛を有する患者は非常に多く,医療施設受診をもたらす最も多い症状の1つである.一般に急性腰痛は腰痛発症から4週間未満の腰痛の総称であり,“ぎっくり腰”と呼ばれることも多い.重量物を持つ,腰を捻る,屈むなどの受傷機転があることが多いが,誘因なく発症することもある.疼痛は筋・筋膜や椎間板などの脊柱を構成する組織の傷害だけでなく,さまざまな疾患,外傷により引き起こされ,診断困難な“非特異的腰痛”も一定数存在する.多くは自然軽快するが,治療に難渋し腰痛が慢性化することもある.
【病態】
急性腰痛の原因は多岐にわたる.脊柱を構成する椎体,椎間板,椎間関節,筋・筋膜などが外的刺激により炎症を生じ疼痛をきたす脊椎由来が最も多いと考えられるが,そのほかにも神経由来,内臓由来,血管由来,心因性がある.脊椎由来の腰痛では多くは加齢による退行性変化が主因となる.しかし脊柱は多くの構造物が複雑に機能しており,どの組織が腰痛の原因かを正確に同定することは容易でない.腰椎変性と腰痛の関連については,椎間板変性,終板変化,腰椎分離症は腰痛と関連する.特に変性椎間板には異常神経侵入がみられ,椎間板における疼痛の原因とされる.
問診で聞くべきこと
急性腰痛の原因には重篤な疾患が含まれるため注意深く問診を行う必要がある.まず受傷機転,時間や活動性と腰痛との関係,胸部痛や下肢症状の有無を確認する.前後屈時の腰痛の有無は腰痛の発生部位を評価するのに重要である.また表21-1図の項目は重篤な脊椎疾患の合併の可能性を示す危険信号であり,必ず聞いておく必要がある.
必要な検査とその所見
(1)単純X線検査
椎体や椎間板の形態的変化を評価するために行われる.非特異的腰痛には必ずしも必要ないとされるが,低コストかつ利便性が高いため,椎体骨折や感染,腫瘍の除外目的にも初期検査として有用である.
(2)CT
骨折や腫瘍の評
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