診療支援
治療

成人の腰椎椎間板ヘルニア
Lumbar disc herniation (LDH) in adults
寺井 秀富
(大阪市立大学大学院 准教授)

【疾患概念】

 腰椎椎間板ヘルニアは椎間板を構成する線維輪が変性・断裂し,主に内包されている髄核が正常の位置から突出あるいは脱出して馬尾や神経根を圧迫して腰痛や下肢痛,神経麻痺をきたした状態である.突出あるいは脱出するのは髄核だけでなく線維輪や終板の一部を含む場合も多い.ヘルニアによって神経が直接圧排されることや,圧迫された神経との間で炎症が起こることにより,疼痛や神経麻痺などの症状が出ると考えられている.

【病態】

 腰椎椎間板ヘルニアは脱出の程度や位置によって分類され,予後や治療方針にかかわってくるので重要である.

(1)脱出程度による分類

①髄核突出(protrusion):線維輪の一部が断裂して髄核が正常の位置から突出しているが,線維輪の中にとどまっている状態.

②髄核脱出(extrusion):線維輪が完全に断裂して髄核が突出している状態.後縦靱帯下にとどまっているsubligamentous extrusionと,後縦靱帯を穿破して脊柱管内に突出しているtransligamentous extrusionに分類される.

③髄核分離(sequestration):へルニアが完全に脱出して硬膜外腔に遊離移動した状態.

【臨床症状】

 発症時期やヘルニア高位・位置によって臨床症状が異なる.発症初期は腰痛を訴えることが多く,その後1~2週で下肢への放散痛やしびれを生じることが多い.L1/2~L3/4の後外側型,L4/5の外側型では大腿前面の痛み(大腿神経痛),L4/5~L5/Sでは殿部から下腿外側への放散痛(坐骨神経痛)が典型的である.L5/Sの外側型では股関節近傍の痛みを訴えることもある.また,圧迫された神経根に応じた筋力低下を生じ診断の一助となる.中心性の巨大ヘルニアでは馬尾が高度に圧排され膀胱直腸障害を生じることがある.


問診で聞くべきこと

 契機となった動作の有無や先行する腰痛,罹病

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