診療支援
治療

腰部脊柱管狭窄症
Lumbar spinal stenosis
三上 靖夫
(京都府立医科大学大学院 教授(リハビリテーション医学))

【疾患概念】

 椎間板の変性に伴う脊柱管内への膨隆,椎間関節の関節症性変化による変形,黄色靱帯の肥厚などにより腰部脊柱管に狭窄が生じ,脊柱管内を走行する硬膜管内の馬尾や神経根が圧迫を受け症状をきたす,腰椎の代表的な変性疾患である.椎間孔内外での神経根の圧迫も,腰部脊柱管狭窄症に分類される.

【病型・分類】

 病態による分類として国際分類(Arnoldi, 1979)が知られているが,日常診療では症状と画像による分類が用いられている.症状による分類には馬尾症状を呈す馬尾型,神経根症状を呈す神経根型,両症状を呈す混合型の3つの病型がある.画像による分類には脊柱管が全体的に狭くなり硬膜管が圧迫を受ける中心型と,外側陥凹で神経根が圧迫される外側型がある.

【臨床症状】

 脊柱管の断面積は姿勢により変化することから,症状は姿勢や動作によって変化する.最も特徴的な症状が間欠跛行である.歩行により殿部や下肢に疼痛,感覚異常(しびれ感,灼熱感,締め付け感など)や脱力感などが強くなって歩行を中断するが,休息で症状が軽減し歩行を再開できる症候である.立位の持続でも同様の症状が生じることが多い.歩行・立位などで強くなる症状は,障害された神経根の支配領域に生じる疼痛や感覚異常,筋力低下などの神経根症状と,硬膜管内で複数の馬尾が障害され生じる会陰部や両側殿部下肢の感覚異常や脱力感,膀胱直腸障害などの馬尾症状である.


問診で聞くべきこと

 疼痛や感覚異常が,どのような姿勢や動作で生じるかを聴取する.多くの症例で,症状は歩行や立位で強くなり,前屈位で軽減する.座位をとると腰椎の前弯が減じて症状が軽減することから,自転車には問題なく乗れることが多い.


必要な検査とその所見

 体幹後屈時に殿部下肢への放散痛やしびれ感が誘発され,Kemp徴候が陽性であれば診断の手掛かりとなる.椎間板の膨隆や黄色靱帯の肥厚が脊柱管狭窄の主な因子

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