診療支援
治療

椎間関節嚢腫,ガングリオン
Facet cysts, ganglion cysts in the lumbar spine
日下部 隆
(東北労災病院 脊椎外科部長〔仙台市青葉区〕)

【疾患概念】

 椎間関節近傍の嚢腫性病変はガングリオン嚢腫や滑膜嚢腫と報告されていたが,現在は総称して椎間関節嚢腫と呼ばれる.脊柱管内で硬膜(馬尾)や神経根を後側方から圧迫することで腰下肢痛や麻痺を惹き起こす.発生機序は,関節症性変化をきたした椎間関節の動きによって黄色靱帯関節包部が破綻し,靱帯内の亀裂から嚢腫が発生,膠原線維化とフィブリン様変性により増大すると考えられている.

【頻度】

 症候性腰椎病変における画像診断では0.5~2.3%に,各種脊椎疾患に対する除圧術の1.6%に滑膜嚢腫を認めたと報告されている.また,脊柱管内滑膜嚢腫の96.2%が腰椎発生例であったとされる.

【病型・分類】

 発生椎間高位に一致した神経障害をきたすが,まれに椎間孔から椎間孔外に局在して通常より1椎間上位の神経根症状を起こすことがある.腰椎手術後に嚢腫が生じることがあり,除圧術後はその手術椎間に,固定術後はその上位隣接椎間に生じる.嚢腫の形態学的特徴から4型(亜型を含めて6型)に分類され,嚢腫の進展機序を反映すると考えられている.

【臨床症状】

 変性に伴って発生するため大多数が高齢者(平均66歳)に生じ,男女比は約3:2である.発生高位はL4-L5椎間が圧倒的に多く,L3-L4,L5-S1と続き,L2-L3,L1-L2は比較的少ない.そのほとんどが片側単椎間例である.特異的な臨床症状には乏しく,症状だけで腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアと鑑別することは困難である.多くが脊柱管狭窄を生じていることから腰殿部痛に加えて神経根症(70%)に伴う下肢痛やしびれ,間欠跛行を呈することが多く,両足底のしびれや膀胱直腸障害といった馬尾障害(25%)もみられる.一般に緩徐発症で罹病期間は約10か月だが,急性増大(嚢腫内出血)を思わせる激痛で発症することがある.


問診で聞くべきこと

 長時間歩行や重労働,外傷歴といった

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