診療支援
治療

腰椎不安定症
Lumbar spinal instability
永島 英樹
(鳥取大学 教授)

【疾患概念】

 腰椎不安定症とは,椎間可動域が異常に大きい状態で症状を伴うものをいう.不安定性の方向には,矢状面(前後),冠状面(左右),横断面(回旋)があるが,通常は矢状面で評価する.腰椎不安定性の原因として,外傷,感染,腫瘍などがあるが,ここでは変性疾患によるものに限定して述べる.

【病態】

 加齢とともに,椎間板に含まれる水分とプロテオグリカンが減少することで,椎間板腔が狭くなる.それに伴い,脊椎周囲の靱帯(前縦靱帯,後縦靱帯,黄色靱帯など)が緩んでくると,椎間安定性が失われて不安定になる.

【臨床症状】

 前屈位から元に戻そうとしたときに腰痛に襲われたり(instability catch),仰臥位で両下肢を伸展させたまま挙上を保持するよう指示すると,腰痛のために突然下肢を落としたり(painful catch),動作時に急激な腰痛発症に対する不安感を訴えたりする(apprehension)のが特徴的な症状と言われている.椎間関節症を呈すると,腰殿部から大腿後面の痛みを訴え,後屈時にこの痛みが再現され,腹臥位にして棘突起を手掌で圧すると腰痛が誘発される.脊柱管狭窄を合併することもあって,下肢のしびれや痛み,間欠性跛行,膀胱直腸障害をきたすこともある.


必要な検査とその所見

(1)X線写真

 腰椎不安定症は前屈位と後屈位の動態側面X線写真で診断する.しかし,変性疾患による腰椎不安定症の診断基準については,いまだ結論はついていない.1例を挙げると,動態撮影ですべりが4mm以上または椎間可動域が10°以上の変化があれば,椎間不安定性があると診断する(図21-16).中間位側面X線写真で,vacuum phenomenon(椎間板腔のガス陰影)やtraction spur(終板から2~3mm離れた椎体でみられる骨棘)があれば腰椎不安定症を示唆している.

(2)MRI

 椎間関節に関節液貯留を

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