【概念】
化膿性と非化膿性の仙腸関節炎がある.化膿性の場合には上気道感染や尿路感染に続発して起こることが多く,起炎菌は黄色ブドウ球菌が多いが,大腸菌による場合もある.結核は漸減傾向にあるが,欧米に比べて多く,結核菌による関節炎の存在を忘れてはならない.
非化膿性仙腸関節炎は,仙腸関節の関節包や靱帯付着部(enthesis)の炎症を起こすenthesopathyで,進行すると関節の強直を生じる.強直性脊椎炎はその代表で,最初に変化するのが仙腸関節とされ,脊椎や股関節などの関節にも炎症を起こしていく.この他に乾癬性関節炎,Reiter症候群,Crohn病,潰瘍性大腸炎,Whipple病,Behçet病を含めた7疾患が血清リウマチ反応陰性の脊椎関節炎(seronegative spondyloarthropathy;SNSA)と呼ばれ,これらも仙腸関節炎を生じる.
【症状】
腰部から殿部にかけての痛みが中心で,下肢症状も伴うことがある.化膿性では局所の熱感,また腸腰筋の刺激症状により股関節屈曲位をとることもある.SNSAでは腰殿部のこわばり感,運動痛,自発痛や脊椎可動域制限がみられ,進行に伴い各関節の可動域制限などが出現する.最終的には仙腸関節や脊柱の強直のために前かがみの姿勢となり,日常生活動作の障害をきたす.
診断
(1)疼痛部位の同定
One finger test(指1本で痛みの中心部を指す)で仙腸関節部付近を指す.また仙腸関節付近に圧痛を認める.
(2)仙腸関節の疼痛誘発テスト
腹臥位で患側の仙腸関節部を掌で腹側に押して疼痛が誘発される(sacroiliac joint shearテスト:Newtonテスト変法).
(3)血液検査
化膿性の急性例では白血球の増多,CRP強陽性を認めるが,亜急性例や結核性では変化が軽度であることも多い.結核性ではツ反陽性が診断の目安となる.SNSA
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